目指す女子教育

一人ひとりの未来を見据えた英語教育

中1英語指導者に訊く―吉田朝子先生

生徒一人ひとりの今あるレベルを上げることが大事です。

エデュ: 昨年中1からスタートした経験者クラスを受けて、今年から新中1生をご担当されるに当たり、昨年担当の臼井先生とは連携プレーが求められたのではないかと思いますが・・・。
吉田先生:

去年の1月頃より新中1クラスの準備を始め、入念な打ち合わせをしました。現在進行中の授業運営についてもこまごまとしたことを聞きながら進めています。たとえば去年は年度の途中から始めたことで、もう少し早く始めていれば効果的だ、ということなどを聞いて、良いことは前倒しで採り入れたりしました。

英検対策もそのひとつです。中1の10月段階で4級を受けるには学校で履修している文法項目よりかなり進んだところまで踏み込んで対策をしなければなりません。メインの授業はそれだけで目一杯なのに、それに加えてどうやって英検対策を採り入れ、合格率を上げていくかが悩みどころでした。ひとつはハイレベルな教科書を使っているので、ある程度高度な内容に生徒たちが慣れていたこと。もうひとつは英語の授業だけでなく、帰りのホームルームの時間にも学年全クラスでリスニング対策をしたりして、全員で「受かるぞ」という意識の高揚へむけた雰囲気つくりをしたことなどが打開策となりました。

エデュ: 今日のプレテスト(明日から始まる期末テスト対策小テスト)は単語100題の書き取りでした・・・。
吉田先生:

英語に苦手意識を持っている生徒でも、単語を一生懸命覚えることで英語に自信が生まれる生徒が出てきます。

逆に、単語だけがどうしても覚えられないという生徒もいます。こういう生徒にはあきらめずに練習してごらんなさい、と励まします。早い遅いの差はあるけれど、やっているうちに必ずどこかでなんとなく単語がわかってくる時がだれにも訪れます。先日も、「今月になってようやく分かり出した」という生徒が報告にきてくれました。時間がかかる子がいてもそれでいいのです。

こういうきっかけで自信が生まれると、他の面にもいい影響を及ぼします。たとえば、単語テストとは別にレシテーションコンテスト(暗唱コンテスト)があります。文法は苦手だけど、発音を聞いてきれいに復唱するのは得意だという生徒もいて、自分は今まで英語に苦手意識を持っていたけれど、「英語、上手に読めるね」と誉められてから自信につながり、伸びて行った子もいます。カリキュラム上の授業だけでなく、このように単語テスト、レシテーションコンテスト、英検対策などさまざまな要素を採り入れることでよい方向へ向かうことができると思います。

エデュ: 先ほどの授業は前半が単語のプレテストで生徒も懸命でしたが、後半はがらっと目先を変えて英語の歌詞の朗読と歌唱という楽しい授業でした。
吉田先生:

経験者クラスは意識的に宿題の量をふやしたりして、平素からハードなことを要求していますので、その“ごほうび”として楽しいことも採り入れましょう、という意図も今日の授業ではありました。ただ、曲を歌うということだけでは経験者クラスの生徒にはそれほど面白みのあることではないので、原曲もややむずかしい歌詞のもの、リズムもハイテンポのもの、というようにだれにでも歌えるものではない(ちょっと得意な子でないと歌えない)ような歌を選び、「ぼくたちにはこの歌が歌える」という自信にもつながればと考えました。曲の選択も、ちょうど文法で過去形が出てきたところだったので、不規則動詞の入っている歌詞という観点を考慮しました。

エデュ: 経験者クラスを担当してまもなく1年になろうとしていますが、どのような感想を持たれましたか。
吉田先生:

始めにカリキュラムを示されたときは、はたしてこのようにできるのだろうかという不安の方が大きかったです。去年1年間、臼井先生がチャレンジして、「必ず生徒に変化が表れるから・・・」と励ましていただきました。結果はまさにそのとおりとなりました。「できない」と思っていればできないことでも、「やれるのではないか」という気持ちで取り組めばできるものだな、と実感しました。学校のランクや入試の成績ではなく、生徒一人ひとりの今あるレベルをどれくらい伸ばせるかが一番大事ではないかと思います。その意味では努力が実ってきているのではないか思っています。