英語教育者に訊く| わかりやすいハイレベルな授業

エデュ:「経験者クラス」がスタートし3年目になり、中学3学年全てに「経験者クラス」があることになりました。現状をお聞かせください。
カレン先生

5つのグレードに分けたクラス編成を行っていますが、トップレベルのクラスに在籍している生徒は自分の英語力に自信を持てますし、誇りを持っているので意欲的に勉強に取り組みます。授業以外にHR、聖書、賛美歌も英語で行うなど常に英語に触れる環境ですので、中学3年生はすでに海外で生活するのに十分な会話力が身に付きつつあります。英語圏以外のヨーロッパの生徒たちが英語を勉強しているのと同じような雰囲気があります。

一般クラスの生徒は英語を勉強してきた経験が無く、また入学するまで外国人に接する機会も少なかった場合が多いので、こうした生徒が私たち外国人教員を見ると最初は身構えてしまいます。

しかし日ごろから多く英語に触れる環境にある本校では、学年が上がるにつれて日本人の先生に接するのと同じように私たちに接してくれるようになります。もちろん英語で、日本語を話すように自然に話しかけてくれます。

中1担任:倉澤先生

英語に力を入れている学校と認知されるようになり、子どもたちが英語の勉強に対し高い意識を持って入学してくるようになりました。先日、1年生の生徒にハリーポッターを授業で扱って欲しいとお願いされました。話を聞くとその子はハリーポッターが大好きで全文をノートに写し日本語に翻訳しているのです。いくら経験者クラスの生徒といえ翻訳は非常に難しいことですし、まして1年生には難しい内容ですが、生徒たちに人気のある物語ですので授業で扱うことにしました。自分たちが興味のあることであれば多少難しくても出来てしまう、生徒たちのパワーを感じています。

中3学年主任:海老原先生

英語に力を入れることで、他の教科にも効果が波及しています。英語科でノートのとり方を指導していますし、宿題が多いため毎日自宅学習する習慣が身に付きます。これらは他の教科にも共通することです。

エデュ:ほぼ全ての生徒が中学2年で英検4級を取得し、何人もの生徒が中学2年で2級を取得するなど順調に成果が出ていますね。
中3担任:臼井先生

「経験者クラス」を導入し、帰国生や英語が得意な生徒が増えたことで生徒同士が刺激し合っていることが結果に結びついています。中学3年のトップのクラスでは、経験者は3分の1で3分の2の生徒は、入学後努力して一般クラスから上がってきた生徒です。

海老原先生

 英語での成果を自己実現とどう結びつけていくか、世の中でこれからの人生を自分がどう歩んでいくのか、こういったことを見つめられるようになって欲しいですね。

本校では帰国生以外に外国籍の生徒も多数在籍しています。特に私の担当する3年生はアメリカ・ベトナム・韓国・台湾などの生徒がいます。日本の国際社会での地位は必ずしも十分なものではありませんし、近隣諸国と十分な相互理解ができていません。12歳〜18歳までの時期にいろいろな国籍の友人を持ち、一緒に学校生活を送ることはとても意味のあることです。

エデュ:前回の取材のとき会話力と、文法の力を養いたいとおっしゃっていましたね。
臼井先生

経験者クラスの生徒は元々英語でのコミュニケーション力があり、さらに本校に入学して中学1年次、2年次に会話を中心とした英語を学びます。3年生はカレン先生がおっしゃったように、すでにかなり高いコミュニケーション能力を身に付けています。

ただ文法の力はこれだけでは身に付きません。そこで今年度の3年生からはライティングの授業を始めました。マイクロソフトのワードを利用して英語のエッセイを書くのですが、パソコンの使い方からエッセイの書き方まで全て英語で説明します。最初は2、3行しか書けなかった生徒達も多くのエッセイを書くことで、今では長い文章を書けるようになっています。

トップレベルの生徒をさらに伸ばしていく一方で、思うように成績が伸びていない生徒がいます。そういった生徒もトップレベルの生徒がいることで自分もそうなりたいという憧れがあるため、諦めず努力しています。まだ計画段階のことですが、この生徒たちの為に復習を多く取り入れた授業を行いたいと思っています。

エデュ:中学校から高等学校へと続く6年間の英語教育の流れをお聞かせください。
臼井先生

中学1年次、2年次は英語でのコミュニケーション能力を重視してきました。これは従来の日本での英語教育と異なるもので、まずは自分の考えを英語でしっかりと伝えられる能力を身に付けます。

中学3年次、高校1年次はそれまでとは異なり、よりアカデミックな内容を扱うようにして、文法や書く力を身に付けます。

高校2年次、高校3年次に大学進学を意識した、受験にも対応した総合力を身に付ける指導を行います。