進路主任に訊く | 中高一貫教育だからこそ

-中高一貫校の進路指導-

近年確実に進学実績を伸ばしている聖学院。加えて、特色ある英語教育を経験した生徒さんたちが数年後に卒業するので、さらなる進学実績の伸びが期待できます。こうした中、聖学院では単なる大学進学指導にとどまらず、中学と高校の6年間をかけて、先を見据えた「10年後の未来につながる進路指導」を行っています。こうした取り組みについて、進路主任の三部先生にお伺いしました。

エデュ:10年後の未来につながる進路指導のついてお聞かせください

−なりたい自分を見つけ、そこから逆算して考える−

進路指導というと大学進学についての指導というイメージがあります。また学校側は有名大学への進学者が多いに越したことはありませんので、どうしても難関・有名大学への進学指導を進路指導と考えがちです。

しかし本校の進路指導は単に有名大学へ進学させる指導を行うものではありません。自分が何をやりたいのか、関心や適性から将来の職業を見極めさせることが重要だと考えます。10年、20年後の自分を考えることで、なりたい自分から逆算して進路を考えるということを指導しています。自分が思い描く将来に向け、どう歩んでいくのか。その道筋に大学があるのであれば、大学で何を学ぶのか。そのためにはどの大学の、どの学部に行くのかという目標を定めます。

−どうして大学に行くのか。目的を持つということ−

フリーターやニートの増加が社会問題になっています。この問題の根底には目標がはっきりしない状況で、漠然と大学に進学することだと思います。目標がなく大学に入ったため、卒業後に何をしたいのかわからないのです。子どもたちが将来、この状況に陥ることなく社会で活躍するために、中学・高校の6年間の適切な進路指導を行う必要があります。

エデュ:具体的な進路指導についてお聞かせください

−中高一貫教育であることを生かした
          中学3年から始める進路指導−

本校では進路指導を中学3年から始めます。まず、中学3年の夏に3泊4日の勉強合宿を行い、この中でHNKのテレビ番組「プロジェクトX 」を見て、仕事と家庭の関わりについて考えます。また、夏休みの課題として両親や親戚などの身近な大人の職業について見聞しレポートを書くことで、職業について意識させます。

次に職業に就くためには大学に進学しなければならないので、中学3年の12月に大学キャンパスツアーを行います。これは講義見学、学食での食事などを通してどんな雰囲気なのかを肌で感じることで、大学とは何のために行くところなのか、何をするところなのか知る機会を作ります。

高校1年次にリクルート社の R-CAPで適性検査を行い、自分では見えなかった職業観や適性を把握し、目指す進路が自分に向いているのかどうか、やりたいことは何なのかを客観的に考えます。高校2年から文系・理系に分かれ、目標に向かって勉強していきます。

−進学指導ではなく進路指導であるということ−

高校卒業後の10年後のなりたい自分を考え、「どの大学へ進学する必要があるのか。何を学ぶべきか。」そういった目標を持った時点が早ければ早いほど、目的意識を持って有意義な学校生活を送ることが出来ます。

本校は進学校ですが、先を見据えた進路指導によって、生徒自身が10年後の自分を考えた結果、大学で学ぶことを選択させたいと思います。先のことを十分に考えない大学進学のための進路指導とは異なっていると自負しています。

−教員同士の情報共有−

この取り組みを始めて今年初めて卒業生を送り出しました。今年は浪人生の割合が2年前に比べ半減するなど成果をあげています。また進路指導の信念として、情報の共有を徹底されています。一部の先生だけで情報を持つのではなく、学年の枠を越えて正しい情報の共有を目指し、校内LANに進路のページを設置。生徒へ進路指導を行っています。

 
エデュ:夏休みにサマーセミナーや勉強合宿を行っているとのことですが、具体的にお聞かせください。

勉強合宿・サマーセミナー共に3年前にスタートしました。それまでは各教科がそれぞれ独自に夏休みの講習を行っていましたが、学校が一丸となって補習や講習を行うことで効果的に指導できるようになりました。また日常の学習習慣が身に付いても夏休みの40日間でその習慣は失われてしまいますので、この取り組みは生徒の学習習慣の継続という点からも効果的です。

具体的内容は以下のとおりです。

  • 中学1年次、2年次は5日間、全生徒参加で英語と数学を50分1コマで2コマずつ計4コマの授業を行います。力のある生徒にはより発展的な内容を行い、勉強に自信の無い生徒には補習指導をします。学習習慣が身に付いていない生徒も多く、学習習慣の定着も目的にしています。
  • 中学3年次では学習習慣を身に着けている生徒をより高めるため、また環境を変えて勉強することを目的に3泊4日の勉強合宿を行っています。1日7〜8時間の勉強を行う勉強漬けのレベルの高い合宿です。
  • 高校1年次〜3年次は5教科をレベル別に3つのクラスに分け特別講習を行っています。90分1コマで、5日間を1期として2期行います。各学年、生徒の8割近くが参加します。また高校3年次はサマーセミナーで足りない部分を補うため英語、数学、理科に関してはアラカルト補習を行っています。これは名前の通り、生徒が自由にやる内容を決められる講習で、大学受験対策が行われています。さらに高校2年次、3年次はセミナー期間に三者面談を行います。