一 説明的文章:谷川俊太郎・長谷川宏『魂のみなもとへ――詩と哲学のデュオ』約1400字(詩「川」の引用含む)、二 文学的文章:橋本 紡「永代橋」(『橋をめぐる』)約8700字(詩「川」の引用含む)。韻文と物語文の出題だが、読解問題二つという構成は例年と同じ。一昨年度の難解な文章の出題から、昨年同様に適正な問題に近づけようとしている。設問は、一見解きやすいが、いざ解答すると力量差が出るつくりとなっている。一例を挙げると、一 問一「(引用の詩)「『川はどうして笑っているの。太陽が川をくすぐるからよ』からどのような川の情景が思い浮かぶか」という擬人法の解釈も、情景をイメージしそれを十分表現する点が問われ、難度は高い。抽象的なことを具体的に表現できる力が問われるからである。
Ⅰは計算と小問。Ⅱは図形がらみの問題。Ⅲ~Ⅴは大問(Ⅲは今回は立体の展開図の問題。Ⅳはカードと数列の問題。Ⅴは図形上の点移動の問題)。例年と変わらない出題数と問題構成である。Ⅰの(1)で③はN進数の問題で一の位が3になることから、アは6以上の数として作業を進める。昨年度のこの箇所は分配の法則を使った約数がらみの問題で、問題をどの視点からみるか、普段からいろいろな見方に慣れておくことが大切。Ⅲの立体の展開図は20年度入試のⅠ(2)の立体の表面積やⅣの立体の表面積、19年度のⅥの正多面体の問題、17年度の立体の切断の問題と続くもので、やはり立体の問題を多面的に取り扱う練習が必要になる。Ⅳの数がらみの問題も、もちろん毎年のように出題されているもの。Ⅴの点移動の問題は、久しぶりの出題であるが、問題で順に誘導している通りに解きほぐしていけばよい。まとめとして、中レベル上の計算、数がらみの問題を多面的に考えること、図形・立体の問題を普段から楽しんで練習することがポイントになるため、普段の学習でも問題を一歩進んでじっくり考えてみる習慣を身につけることが大切。
例年、大問で4~5題。学校のレベルに比べたら問題は易しいと言える。ただ、スピードが要求される。問題を読み設問の要求を理解し、すばやく計算することが必要なので、スピードを身につける必要がある。今年の問題は、Ⅰがものの運動(振り子)。問3に迷う選択肢があるが、それ以外は容易に解ける問題。Ⅱは二酸化炭素の体積と圧力。あまり見慣れない問題であるが、難しいところはない。Ⅲはゾウリムシの分裂と、モンシロチョウや他の生物の死亡率の問題。昆虫が卵から成虫になるまでの死亡率の問題は、他の学校でもよく出題されるもの。他の学校でよく目にする問題を出してくることが多い。Ⅳは台風、Ⅴは小問集。このあたりは、時間もかからずに楽に解ける知識分野なので最初に解いてしまい、Ⅰに戻りじっくり解いていければ、精神的にも落ち着いて解けたであろう。
大問3題の形式は例年通り。地理・歴史・政治の各分野から1題ずつ。以前は時間との戦いというイメージであったが、最近はややゆとりがでてきている。30分で40題強の解答ということを考えても、決してゆっくりはできないが、以前のような慌しさはないはずである。ただし、記述の問題が3題程度出題されているので、ここで時間を使ってしまうと厳しくなる。内容的には、難解なものは多くないが、中に数問考えこまされる問題がある。Ⅰの海上保安庁が属している省庁を答えさせる問題や、Ⅱの常設の軍隊を持たないことを憲法で定めている国を答えさせる問題がそれにあたる。配点的には大きくないので、ここで時間をつぶさずに、他できちんと点数をとることを考えて、1・2題は目をつむるという勇気も、合格のためには必要であろう。