文学的文章:瀬尾まいこ『ゴーストライター』約7800字。物語文1題は例年通りの出題。昨年の約7000字の出題よりも文章が長い。漢字4題、選択式問題1題、抜き出し問題1題、以外はすべて記述式の出題。高校を卒業して上京を目前に控えた兄を持つ弟が主人公。「兄弟」とは何か、軽口を飛ばしあう兄弟の、本心を隠したお互いのやりとりから、それぞれの思いを受験生に考えさせる。軽妙な文章の流れの中で細かな心情を読み解くのは大変だったかも知れない。合否を決めるのは、記述対策をどれだけ取れるかだろう。国語がどんなに得意な受験生であっても、いきなりここで出題される記述を書き上げるのは無理だろう。そこで、早めの準備が必要となる。
大問数は一昨年までは7題であったが、昨年度から6題となる。全体的には昨年同様、手をつけやすい問題である。内容は、[1]は演算記号の問題、[2]は単純な旅人算であった。多少の計算力は必要であるが、十分対策してきた受験者ならば難なくできる問題である。[3]はボール数を互いに素になるように調べる問題、[4]は速さと周期、[5]は正六角形の面積比1問、[6]は水路を使った規則性の問題。最後の[5]・[6]は、意外にもパターン問題であったのであっさり解ける問題であった。[3]・[4]が調べ上げる問題であったので、ここでどれだけ正確に答えたか、また時間を取られたかが点数の差になったであろう。対策としては、パターン問題はすべて熟知し、問題の本質を常に見抜く力を養う高度な学習が不可欠である。
基礎的な内容を問いつつも出題内容の理解力と発展的に考える力を問う内容が出題の特徴。身近な自然や道具、古典的な科学的トピックスから最先端科学、時事的内容まで多様な題材が取り上げられる。問題文をしっかりと読み取り、題意を正確に捉えて筋道を立てて考え、簡潔にかつ正確に表現できる記述力が要求される。高度な計算・作図力が求められることもある。レベルの高さは首都圏随一。[1]鳥類やコウモリやイルカの生態と体の仕組みの合理性について。[2]気象の基本から天気予報の問題点とヒートアイランド現象、フェーン現象の計算問題を通して、一昨年の夏に見られた猛暑について。[3]物の浮き沈みにはどのような法則が見られるのか、実験結果を通して明らかにしていく。そしていわゆる「ガリレオ温度計」の原理を考えさせている。[4]実験器具の使用目的と実験操作の基本を確認したうえで、実験器具の使用目的と測定誤差について考えさせる。計算問題も含む。
地域の生活をそこに住む人々の力で支えることが出来なくなっている日本の地方の現状を、山形県を例に説明し、その解決策を江戸時代そして現代の取り組みを紹介することで考えさせる問題が出題された。用語説明や空欄補充の問題は平均的なレベルなので、特に対策は必要ないだろう。統計資料の読み取りや記述問題に関してはさまざまな角度から問われるので、過去問や類似問題を数多く解くことで物事を多角的に見る力を養っておく必要がある。なお、文章が長く、記述問題が多いという出題の特徴を考えると、時間配分を意識した過去問演習が必要不可欠である。また、日頃からニュースを積極的に見ることも合格のために必要な学力を付けるのに役立つだろう。これに関しては早い時期に習慣化してほしい。