読売新聞の土曜の夕刊に掲載されている「週刊KODOMO新聞」(以下、KODOMO新聞)は、中学入試の時事問題対策に最適な媒体として、インターエデュが注目するコンテンツ。そのKODOMO新聞の編集方針について、担当の赤池泰斗氏に伺った。聞き手は20年以上の中学受験指導経験を持つ、インターエデュ副社長・森山敏久。
※KODOMO新聞の掲載日や内容は、一部地域で異なる場合があります。
※この対談は2007年8月下旬に行われました。
森山:貴紙は毎週土曜日の夕刊に、お子さん向けの記事「KODOMO新聞」を掲載されていますが、どういった編集方針をお持ちでしょうか。
赤池氏:最も大切にしていることは、新聞を通した親子の対話です。日々のニュースをお子さん向けにリライトし、カラー刷りにしてイラストを入れることで、お子さん一人でも読めるような解説もしています。ですが、できれば、ぜひ親御さんがお子さんに読み聞かせをしていただきたいですね。
森山:そして新聞から親子の対話が生まれるわけですか。お子さんの発達にとって実にいい環境ですね。
赤池氏:塾での教育の現場において、家族の対話の有無を実感されることはありますか?
森山:それは大いにあります。お子さんによって授業での集中力や知識の吸収力、休み時間の言動がかなり違いますから。小5のお子さんの場合、生まれてから10年間の言語生活が言動にはっきりと表れます。面談の際によく思うのですが、家庭での対話の多いお子さんは、頭が耕されている場合が多いです。
赤池氏:なるほど。たとえば小5のお子さんの場合、生まれてからの10年間で家庭においてどういう会話がなされていたのかが、お子さんの知育を左右しかねないわけですね。
森山:編集方針について、他には何か気をつけていらっしゃる点はありますか?
赤池氏:そうですね。ちょっとした教養も身につけられるような気配りをしています。たとえば参院選後の安倍政権の内閣改造に関する話題を扱った、2007年8月のある回では、『国務大臣は17人まで』とか『半数以上は国会議員で構成される』といった組閣のルールについて解説しました。
森山:あ、それは中学受験の公民分野で必ず学習する内容ですね。中学受験を志すお子さんにとっては、ちょうどいい知識の確認になりますね。
赤池氏:中学受験の算数や国語の問題を載せているコーナーもありますが、小学生が難しい問題を解くのですね。国語の文中に『マルクス』なんて名前が出てきたり。大人でも片手間では解けない問題です。
森山:もちろんそういう問題の場合は注釈がついています。小学校の指導要領を超えてしまいますから(笑)。
赤池氏:ですよね(笑)。
森山:とはいえマルクスがどういうことを唱えた人物なのか、漠たるものでも知識があるか否かで、入試の難度は大きく違ってくるでしょう。そういう意味で、本や新聞を読んで広範な教養を身につけることは、中学受験を考える上でけっして遠回りではないといえます。
赤池氏:やはり古典が多く出題されるのでしょうか。
森山:単に古典だけとも言い切れません。前の年のベストセラーが国語の出典になることも増えてきましたし、社会では時事問題が多く出題されるようになりました。教養から時事に至るまで、本当に幅広い知識を要求されるのが昨今の中学入試です。そういった問題に対応するためにも、お子さんたちが新聞を読むことを塾で奨励しています。
森山:たとえば’07年入試では、渋谷教育学園幕張中でこのような問題が出題されました。レジ袋問題にスポットライトを当てた、‘07年の中学入試の中でもかなりの良問です。
赤池氏:あ、このレジ袋に関する話題はちょうど昨年、うちでも取り上げました。それにしても……難しいところを突いた問題ですね。
森山:しっかりと題意を把握するトレーニングだけでなく、日頃から社会に対して目を向けていなければ得点できません。
赤池氏:ディベートという設定だけでなく、レジ袋の廃止に反対する意見を書かせるという設定も面白いですね。賛成側の意見を書くのは楽ですが、反対側の意見となると、レジ袋問題に対してしっかりとした知識が必要になる。
森山:そういった意味で、われわれ塾サイドからも、新聞を読むことを生徒に推奨しているわけです。ちゃんとKODOMO新聞を読んでいた受験生は得点できる問題なわけですし。
赤池氏:これまで中学受験には、『入試を突破することだけを目的とした詰め込み教育』という印象を持っていたのですが、実情は全く逆なんですね。むしろ世の中の動きをヴィヴィッドに見ていなきゃいけない。
森山: ええ。やはり国公立大学の合格実績を作ってくれるお子さんが欲しい、というのが多くの私立中学の本音です。そういった中学では、国公立大の入試で要求される「論理的思考力」の素地があるか否かを測る問題が出題されます。
赤池氏:そういった力を養うためには、ガリガリと詰め込みを行うだけじゃなくて、社会にもっと目を向けて幅広い教養を身につけていかなければならない、と。
森山:ですね。これは私が保護者面談の際によく申し上げていることなのですが、難関校を志すのであれば、新聞の一面に載るニュースが家庭の話題にならないようではお話になりません。
赤池氏:KODOMO新聞をきっかけに、社会に対する意識を養ってもらえればうれしいです。そこで新聞を読む習慣をつけていただいて、もっと詳しく知りたいお子さんには、一般の紙面にも目を通してもらえたらありがたいですね。