inter-edu.

中高一貫校に通う中学生の方のための教室 Z会東大マスターコース/芝中学校・芝高等学校 石川教頭先生インタビュー

中高一貫校に通う中学生の方のための教室 Z会東大マスターコースの夏期講習 Z会東大マスターコースの夏期講習についてはコチラ!

私学の魅力は、学校独自の教育理念と雰囲気

進学実績のみでなく、それを極めて学校選びを!

inter-edu:
私学の魅力は、どんなところだとお考えでしょうか?

石川教頭先生:
公立のゆとり教育への不安もあり、10年位前から一時期、私学ブームのようなものがあり、非常に多くの方が私学を受験させ、入学させていました。本来、私学というのは、この私学の教育に賛同する、ウチの子をその教育方針で教育してほしいという親御さんが選ぶのが、基本だと思うんですね。ですから、私学ブームというのは本当の姿ではないと感じていましたので、今、ブームが去り、受験者数は減ってきていますが、しっかりと私学の中身を吟味して受験している現状は、私学にとっては良いことだと思っています。私学というのは、教育理念というものが、一番大きな根本にある、各私学みんな違った理念で学校は存在しています。この時期だからこそ、それを明確に保護者に伝えられるのではないでしょうか。

私学はどの私学も、設立のアイデンティーがあります。伝統のある学校ほど、設立の理念は大きく違うんです。私学はそれが残っているはずだし、残っていないと逆にダメだと思います。これから受験を考えている方は、もう一度基本に立ち返って私学を見てほしい。進学実績などだけで判断されるのではなく、私学の持っている理念を見てほしいと思います。
もうひとつ大切なのは、その理念を引き継いでいる、今の雰囲気です。
芝学園は、自由でのびのびしていて、気持ちが優しい子が多い。ほんのりとした穏やかな校風があります。私学によっては、かなり厳しい校風の学校もあれば、逆に自由で学校側のルールがあまりなくて、生徒の責任に任せている学校もありますね。昔の理念と今の校風、その2つが大きな柱ではないかと、私は思っています。

仏教の精神に基づく教育理念

芝学園が育んできた校風は「穏やかで、規律ある自由」!

inter-edu:
芝学園の教育理念を教えてください。

石川教頭先生:
本校は仏教校で、仏教精神に基づいた生徒の育成というのが基本です。もう少し具体的に芝で大切にしていることをお話しすると、一つは「共生(ともいき)」の気持ち、もう一つは「救う」という気持ち、この2つを大切にするということです。仏教というのは、救う宗教なんですよ。困っている人を救うという宗教なので、我々としても、生徒を救ってあげたいという気持ちが強いですね。この「共生」「救済」については、震災以降、日本人が大切にしていた価値観として、見直されたところがありますが、芝学園では、昔から大切にしていることなんです。ですから、芝では、生徒同士で競争させることは、あまり良しとしない。今、社会は競争社会にのめり込んでいっていますが、学校の中には、過度な競争意識を持ち込ませたくないと、我々は思っています。点数で生徒を競い合わせたりすることは避けたいんですね。競争のために頑張るというのは、本当の教育ではないと思っています。大学受験になると、どうしても競争を意識せざるを得なくなりますが、高1、2年くらいまでは、競争をあおり立てるようなことはしません。それよりも、昨日よりも今日の自分、去年よりも今年の自分と、自分が成長する、良い人になるということを大切にするよう指導しています。

けれども、小学校の時に塾に行って、1~3年間、本当に偏差値での競争の中で生きてきた、入学してきたばかりの中学1年生は、そういう価値観が普通のことだと思っているんですよ。我々大人になると、小学校の時の偏差値の競争なんて、人生長い目で見れば、大きいものではないとわかるのですが、子どもはその世界しか知らない。本当にガチガチの競争の中で生きてきた生徒達の価値観を、言葉で変えるのは難しいんです。我々教員が、普段、生徒達に「競争ではなく、自分の成長が大切なんだ」という接し方をしているのを見ていて、徐々に変わっていきます。生徒達は、比較的早く馴染んでくるんですが、保護者の方の中には、少ないながらも、なかなか馴染まない方もいらっしゃいます。保護者の方は学校に来る機会も少なく、生徒を通してしか話を聞かないので、芝の良さを知っていただくのには、結構時間がかかります。「お兄ちゃんが○○中学に行っている、芝ではその50分の1も勉強させていなんじゃないか」などと、苦情の電話がかかってくることもあります。ただ、保護者の方も生徒も6年経って卒業の時に、この芝で嫌だったという方は、まずいないです。これだけは、我々、芝の教員の誇りですね。

inter-edu:
校訓である『遵法自治』について教えてください。

石川教頭先生:
『遵法自治』というのは、第3代校長、渡辺海旭が定められた校訓ですが、「法」というのは仏教のことで、「仏教の教えに従って自分を治めなさい」ということです。生徒達には、『遵法自治』を「良いと思うことだったら、積極的にやりなさい。自分達でやってごらんなさい」という言葉で伝えています。
たとえば、クラブ活動、行事、校外学習などは、なるべく生徒に企画させています。我々教員は、それをフォローアップして、何とか実行に移させてあげる、縁の下の力持ちのような存在になるようにしています。低学年は、なかなかうまくできないですけれど、我々教員が支えてあげると彼らは自信がつき、次の年になるともっとできるようになっていきます。上級生になった時は、学校のことをうまく運営できるようになっていますね。ある程度の自由さを認めて、生徒のやりたいことをやらせてあげると、企画力もついてくるんですが、生徒同士の連帯感が強まるんですね。連帯感が強まると、「共生」という気持ちが生まれてくる。自分はつらいけれど頑張れば、他の人を助けられるという気持ち、そうした意味で、連帯感というのはすごく大切ですね。

芝の校風を、先ほど、「穏やか」と言いましたが、もう一つに「自由さ」というところがあります。「自由さ」というと、規律がない「自由さ」もありますが、生徒を見てもらうとわかると思うんですが、規律正しいんですね。これは規則で抑えているのではなくて、校風なんです。たとえば、校則には、「髪型は生徒らしく端正であること」と書いてあるだけです。茶髪禁止とかそういうことは書かれていない。だからといって茶髪の子がいるかというと、ほとんどいないんですね。校風、雰囲気で「みんな守ろう!」となっている、それが芝の「自由さ」なんです。「良いことは守ろう、良いことはみんなでしよう!」という「自由さ」です。

好きなことに、とことん打ち込む中高生活を!

芝学園が育んできた校風は「穏やかで、規律ある自由」!

inter-edu:
進学について、芝学園の特徴はありますか?

石川教頭先生:
一般的に言うと、医学部、薬学部系が多いという点がありますね。特別な理由はないですが、実験室が多く、理科の授業が面白いこともあって、もともと理系を選ぶ生徒が多いです。
もう一つ、隠れた特徴は、進学する大学がバラエティーに富んでいることです。日本各地の様々な国公立大学に進学しているんですね。東京だけとか、できる子はみんな東大へ行くわけではないです。一般的な受験というのは、模試を受けて偏差値が出て、自分は文系だから、どういう大学に入れるかという流れになりますが、芝の場合は、まず自分を知るというところから始めます。次に、職業調べということで、先輩達が勤める様々な企業を訪問させ、レポートにまとめます。自分が行けるのは、せいぜい1、2社ですが、クラスだと20社ほどになりますので、情報交換して調べます。大学を考える前に、世の中の職業を調べて、それぞれの職業の長所、短所を知り、自分には何が向いているのか考えるんです。模試を受けて偏差値で判断するのは最後です。自分の将来像から始まって、そういう職業に就くためにはどんな勉強が必要か、また、それを勉強するためには、どこの大学がいいのかという手順で調べると、この大学には自分がやりたい学部がある、研究室があるとなりますから、自然に日本各地の大学に進学していくことになります。やりたいことが見つかった子は、モチベーションがすごく高いので、こちらが勉強しなさいと言わなくても、やるようになります。偏差値を上げなければならないという動機づけは、生徒にとっては、あまり良くないんですね。「君はこれをやりたいんでしょ。それなら、やれる人になろうよ」という動機付けだと、「そうだな、頑張ろう!」となるんです。ですから、大学に行っても、やることが決まらないとか、不登校になるということはないです。やりたいことがはっきりしていますので、大学院にそのまま進む生徒も多いですね。

inter-edu:
学習以外での学校の魅力について教えてください。

石川教頭先生:
一つはクラブ活動ですね。芝としては、勉強と同じくらい、クラブ活動、自分のやりたいことを大切にしなさいと言っているんです。男の子は自分のやりたいこと、好きなことをめいっぱいやれると、勉強も頑張れるんですよ。女の子はコツコツやりますが、男の子は好きなことを取り上げてはダメです。クラブとか趣味は、それだけ大切なものなんです。成績が落ちたから、クラブをやめると言ってくる子もいますが、我々教員は、クラブをやめたからといって勉強ができるようにはならないよと、続けることを勧めます。引退後はしっかり気持ちを切り替えますので、クラブをとことんやった子の方が、現役で大学合格する子が多いです。生徒達は、クラブも勉強も、学校からやらされているという気持ちは全くはなく、自分がやりたくてやっている。その気持ちのまま、大学受験にも臨んでいっています。

また、クラブ活動、行事の委員会活動を通して、先輩が後輩の面倒をすごくよくみることも特徴です。男子校の運動部だと、しごかれるとか、使いっ走りをさせられるとかありますが、芝は本当に先輩が後輩に優しいんです。優しくされた後輩は、やはり、先輩になったときに、後輩に優しくします。そういう中でも、人を大切にする「共生」の気持ちが生まれてきていますね。
先ほど、「救う」という話をしましたが、芝の教員は、勉強ができない子ほど大切にします。補習をしたり、個人的に教えたり、勉強ができない子ほど手をかけるんです。不登校の子に対しても同じです。その子の一生にとって、不登校の時期というのは、すごく大切な時期なんですね。我々は、「さなぎの時期」と呼んでいるんですが、次の大人になるためのステップとして、どうしても必要な時期だと考えています。不登校になったから学校を辞めなさいとか、公立に行きなさいとは、絶対言いません。むしろ逆で、ご家庭にも「芝にいれば、我々が支えてあげられます。他の学校に行ったら、こんなふうに支えてもらえない可能性もありますので、芝にいさせてあげてください」と言っています。勉強のできない子の面倒を良く見るとか、悩みを抱えている子、不登校の子に対して我々教員が大切に接しているのを、生徒達もどこかで感じ、芝が何を大切にしている学校なのかわかってくるんです。だから、上級生になるにしたがって、だんだんと穏やかで気持ちの優しい子達になっていくんですね。好きなことに打ち込み、連帯感を強め、人を大切にする気持ちを培っていく、それが芝学園の学校生活です。
勉強だけに偏らず、美術、音楽、技術にも力を入れていますし、調理実習もやっています。頭でっかちな人間がほしいわけではないし、大学にさえ入れればいいなどとは、全く思っていません。幅広い人間力を養っていってほしいですね。

取ることばかりではなく、与えることができる人に。

他人の気持ちを汲み取り、みんなが豊かな社会に導くリーダーを!

inter-edu:
芝学園の考えるグローバルリーダーの育成について教えてください。

石川教頭先生:
本校の考えるリーダーは、先頭に立って旗を振り、他を引っ張っていくリーダーではありません。一般にリーダーというと、リーダーシップが強いという意味でとらえられますが、芝のリーダーはそうではない。人の気持ちを汲み取り、意見を聞いて、集団としてどちらを向いたらいいのかを考えられる人という意味のリーダーを育てていきたいと考えています。やはり、根底にあるのは「共生」ですね。
大人になっても、話すのは簡単ですが、聞くというのは難しい。聞き役というのは大切で、一段上の技術だと思います。自分のことばかり話す人は、リーダーシップは強くても、あまり好かれないですね。受験生の保護者にお聞きすると、身近にいる芝の卒業生がすごく良い人なのでと、人間的な魅力を志望理由の一つに挙げられる方が多いんですね。人柄が良いというのが、芝の特徴かなと思います。

inter-edu:
将来を担う子ども達へメッセージをお願いします。

石川教頭先生:
競争社会でない社会を作っていってほしいですね。過去30年あまり、世界は競争社会、市場原理社会を組み立ててきましたけれど、それが破綻しつつあります。現代の子ども達には、競争原理でない社会を作り上げてほしいと思います。そして、取ることばかり考えるのではなく、与えることを第一に考える人になってほしい。どうしても現代社会では、自分が得をしたい、損をしたくないと思ってしまいがちです。お金のこともそうですけれど、日常生活でも、ちょっとでも損をしたくないと思えば、すごくゆとりのない社会になってしまいます。ですから、自分が損をすることで、みんなが豊かになるんだと考えることができる子になってほしいです。「Give and take」という言葉がありますけれど、「Take and Give」ではないんです。最初に「Give」しないと「Take」はできないんですよ。それを感じられる人になってほしいと思っています。

Z会東大マスターコース夏期講習についてはこちら
Z会東大マスターコース公式Webサイト