
聖徳学園中学・高等学校は、少人数制教育の中で、生徒一人ひとりの可能性を伸ばす数々のプログラムを実践している。
そうした取り組みの1側面として学力伸長にも力を注ぎ、大学進学実績においても、着実に成果を上げており、2010年9月に発売された『サンデー毎日』では、「入学時の偏差値に比べ、大学合格率が高い学校」の上位にランキングされている。
今回は、聖徳学園中学・高等学校、上遠野護校長と高校2年生の生徒2名にお話をうかがった。生徒の可能性を伸ばす教育に取り組む先生方の熱い思いと、活き活きと学校生活を楽しむ生徒の様子が伝わってくるインタビューとなった。


聖徳学園中学・高等学校は「個性」「創造性」「国際性」の育成を大きな柱として、様々な教育プログラムや特色のある授業を実践し、成果を上げている。
生徒一人ひとりの個性を育てるという点で、1学年約140名、中高で900名に満たない小規模な学校であることにも意味はあるが、個性重視の教育を支えているのはそれだけではない。 70名近くの職員のうち、非常勤はわずか10人あまり。細やかな学習指導のみならず、生徒の心の成長を助け、見守っていく体制を整える上でも、専任教員の多さは大きな意味を持っている。
同校では、中学1年、2年で2人担任制をとっている。
正副担任という形で2人のクラス担当を置く学校はあるが、それとは異なり、生活や食事の指導や個人面談等、クラスの様々な場面での生徒の指導を2人で行う。
上遠野護校長は、「中学入学当初の指導が肝心だと考えています。正副担任ということではなく、2人の教員が同等の立場で4つの目でしっかり生徒を見るのが2人担任制です」と語る。
今の子どもは満たされていて、わがままになりがち。相手の気持ちを理解する力をつけるためには、細やかな指導が必要で、2人の担任の担う役割も大きいという。
スクールカウンセラーも常駐していて、いつでも生徒の相談に応じる体制があるほか、カウンセラー自らが、総合学習の授業の中で、話し方や言葉のかけ方などについて指導することもあるという。
思いやりの気持ちを身につけさせ、いじめの予兆を見逃さないように心を配る。

2人担任制について、高校2年生の早川亮大くんは、「中1の時は周囲に知り合いも少ないので、いつでも相談に乗ってもらえる先生が2人いることは心強かった。クラス間にトラブルも多い時期だったので、2人の先生が上手く取り持ってくれて良かった」と話す。
同じく高校2年生の清水七海さんも「中学2年の時は、男の先生と女の先生が担任だったのですが、男の先生には相談しにくいことでも、若い女の先生には何でも相談でき、先生と一緒に過ごした楽しい活動も思い出に残っています」と話してくれ、2人の担任の先生は、安心感を与える存在になっていたようだ。


行事や体験プログラムが多いのも同校の特色だ。生徒の個性やニーズに応じた活動のなかで、生徒の人間的な成長を育み、個性を伸ばしていこうと考える。
中学1年のスプリングキャンプでは、新潟県奥阿賀で農家民泊をし、田植えや草むしりなどの農作業を体験する。都会では経験できない自然に触れる貴重な体験であり、農家の方々との交流の中で、人間関係を学ぶ機会にもなる。
夏休みに家族とともに再び阿賀を訪ねる生徒もいたり、収穫の際には現地の担当者も来校するといい、10年近く続くこの活動は心の通い合う活動になっている。
今年7月末にこの地域を襲った大雨災害に際しては、地元NPO団体と連携の中で、学校として援助等も考えているという。
この農家民泊は、入学して間もない時期の行事でもあり、生徒同士の親交を深める場にもなっているようだ。
早川くん、清水さんともに、この時宿泊をともにした仲間とは今でも仲の良い友達としてつき合いが続いていると話してくれた。
中1ではほかに、イングリッシュシャワー合宿、スキー教室といった行事が続く。数多くの行事の中で友人関係を広げ、好奇心を刺激される中で子ども達は成長していく。体育祭、文化祭といった学校全体で行う行事では、学年を追うごとに生徒達はそれぞれ自分達の役割を果たし、自ら考え、共に話し合いながら、行事を盛り上げていく。

「国際性」の育成という面からは、中学3年と高校2年で海外研修を行っている。中学3年では、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドから選んでホームステイを体験、高校2年ではチェコ・オーストリア、フランス・イギリスで、ヨーロッパの歴史と文化に触れる。また、短期、中期、長期の語学留学制度もあり、多くの生徒が参加している。
早川さんは、オーストラリアに3ヶ月の留学を経験している。
「現地では、何でも自分から言わないと伝わらないことを実感しました。その日あったことをホストファミリーに話さなければならないという習慣だったので、毎日話すことを考えていて、いつの間にか、自分がよくしゃべるようになったように感じます」と話してくれた。また、留学によって学校の良さ 友達の大切さを改めて感じたとも言う。
イギリスでの3週間の語学研修に参加した早川君は、「ロンドンで自由行動をしてみて、自分で考えて自分で行動することが必要とされた。自分の行動に責任を持たなければならないという気持ちが強くなりました」と話す。海外での研修は視野を広げ、積極性や責任感を育む上でも大きな経験となっているようだ。
校長は「堂々と意見を言える、国際舞台で活躍できる人間になってほしい」と語られたが、生徒達の海外研修の感想を聞くと、彼らが着実にそうした国際人に向かって成長していることを感じる。

また、「創造性」の育成という意味からは、通常の授業等の中で、知識の詰め込みではなく、自分で試行錯誤して考える姿勢を重視するほか、中学1、2年生で総合の時間に週1回、「知能開発」という特徴ある授業を行っている。
知能構造理論に基づいた知能開発プログラムによる授業で、創造力、問題解決能力を引き出していくというもの。聖徳学園幼稚園、小学校で行っている英才教育の蓄積、ノウハウを生かしたもので、2人の教員が指導にあたる。
パズルやクイズ、ゲーム感覚のものから百人一首や三題噺など様々な分野にわたった内容で、発想力や柔軟な思考を身につけていくものだが、生徒にとっては学ぶ楽しさが感じられる授業として印象づけられ、知的好奇心を刺激する時間となっているようだ。

聖徳学園高等学校では、今年度より高校で難関大学チャレンジクラス(難関大CC)を新設した。さらに来年度からは、中学で難関大学チャレンジコースを開設し、学習意欲の高い生徒の指導を強化し、中学から難関大学合格を目指していく体制を整える。
同校では、従来から全学年で英数に関しては、ホームルームクラス(35人程度)の人数以下の少人数で習熟度別クラス指導を行ってきた。高校3年の理科、社会では分割授業が行われ、さらに少人数での指導が行われている。また、年6回の試験を実施しているのも特徴だ。少ない範囲で復習し、確認することで生徒達の学習面でのつまずきを減らし、遅れがちな生徒には補習等でフォローするなど、きめ細かく学力の定着をはかっている。

また、高校1年生以上で大学受験に向けた「進学セミナー」という課外授業を設けており、生徒は希望に応じて選択し、難関大学に合格できる学力を身につけていく。
中には外部の講師による授業もあるが、普段教えている先生方が受験指導もできる方が効率が良いという考えから、生徒達ができるだけ塾や予備校に通うことなく、大学受験を目指していけるようにとの学校側の姿勢が表れている。
セミナーや自習室の利用などで、朝7時半から夜8時まで学校で勉強するということが可能で、夏休み中でも多くの生徒が校内で受験勉強に励んでいる。
進学セミナーで、英語の力をつけたいと、外部の講師による「英語」を選択している清水さんは、大学受験の情報や対策についての話が聞けるところもメリットだと話す。早川くんは、普段授業を担当している先生による「数学」を選択しているが、先生が生徒一人ひとりに面談して学習計画を立ててくれるので、勉強のペースをつくる上でも役立っているという。
こうしてみると、難関大CC新設に代表されるように見える学校改革は、同校が継続してきた「面倒見の良さ」と相反するものではなく、むしろその延長線上にあるように思われる。
学習意欲が高く難関大学を目指す生徒のニーズに応えると同時に、進学実績一辺倒のものではなく、中学から着実に基礎力を身につけていくカリキュラムをとっており、学習に遅れがちな生徒にとってもプラスになるよう配慮がなされている。


進路指導の面では、生徒だけではなく、保護者に対しても進路説明会が行われているのも特徴的だ。同校では家庭との連携を重視し、普段から個人面談等を行っているが、大学進学のために、保護者にも大学受験のシステム自体から理解してほしいと考える。
生徒に対しては、高校1年でフジテレビキャリア体験プログラム、高校2年で大学見学会などが行われるほか、卒業生による講演会や卒業生を囲む会などが随時行われ、生徒の進路選択や進学へのモチベーションを高める工夫がされている。
また、今秋から中学3年生以上の生徒を対象とした「教養セミナー」も企画されているという。大学受験とは直接かかわない内容で、語学や大学での研究紹介など、教養を身につけたり、キャリア教育につながるものをと検討中だ。生徒の興味や好奇心を刺激し、育成していくために学校がどれだけの引き出しを用意できるかが大切。生徒全員に意味があるかということを重視するのではなく、一人ひとりを見て、その授業や体験の中で目を輝かせている生徒が何人かでもいれば良いと考えるという話をうかがい、学校の懐の深さと生徒への熱い思いを感じた。

学校の魅力について、早川くんは「先生方が生徒の自主性を大切にしてくれる」と言い、清水さんは「先生と生徒の距離が近く、先生が一人ひとりをよく見ていてくれる」と話してくれた。
校長は「卒業生が相談に来たり、何かにつけて学校に報告に訪れてくれる機会が多い」とうれしそうに話される。
卒業生の多くが、在校生の進学や進路指導ために企画する講演や座談会等を快く引き受けてくれるという。学校生活の中で、先生と生徒の間に信頼関係が築かれていることを強く感じ、大切な時間を過ごしたこの学校が、卒業後も生徒達の拠り所となっていることをうらやましく思う。
来春3月、理科教室、国際理解教室、IT教室等を備えた特別教室棟が完成する。現在は、少人数指導のための教室がやや不足している状況だが、この教室棟の完成によってハード面も充実し、生徒達のためにさらにより良い教育を推進できることに期待が膨らむ。