中学からの正しい学習法 中高一貫校の落とし穴

中高一貫生に求められる「バランスのよい学習」

「バランス」が求められる大学入試

国公立大学の入試では、センター試験で5教科7科目が課せられ、個別試験でも受験科目の負担が大きくなります。とくに東大の個別試験は、文系で地歴(日本史・世界史・地理)から2つの科目選択が必要であり、理系でも国語が必要とされるなど、受験科目の多さが特徴として挙げられます。現在の入試制度は「バランスよく学習している方」にとって有利になっていると言えます。


中高一貫生が陥りやすい「3つの罠」

このような状況の中、「科目を捨てる」ことが非常に危険であることは、おわかりいただけるでしょう。苦手科目であっても、基本的な内容を身につけておく必要があります。 「科目を捨てる」ことは、とくに中高一貫校の方に多く見られる傾向です。それは次の理由によります。

  1. 高校入試がないため、苦手な科目が苦手なまま、高校生になるまで放っておかれやすい。
  2. 学校に同じレベルの生徒が集まるので、苦手科目の成績が他の教科より劣っているように見え、自信を失いやすい。
  3. 学校(あるいは保護者の方)が英語・数学に対して過度に力を入れてしまうため、他の教科も大切だという意識を持つことができなくなる。

どの教科も完璧に……ということは難しいですし、英語・数学にある程度の時間を割かねばならないのも仕方ないことと思います。しかしどの教科でも教科書レベルを着実にこなして、定期テスト時にしっかり取り組むことは、さほど難しくないはずです。苦手科目であっても基礎的な部分を身につけておきましょう。

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大学入試で求められる「3つの力」

次に大学入試、とくに国公立大学の入試で求められる「力」について考えてみましょう。学習指導要領の改訂により「教えるべき内容」が削減されたにもかかわらず、東大・一橋大・東工大の志願者数はここ数年増え続けています。削減された学習内容の中で、難関大学は受験生たちに知識の量ではなく質を求めています。そのような中、現在の大学入試で求められるのは次の3つの力です。

1:思考力2:処理能力3:記述力・論述力

現在の大学入試で求められているのは、単純な知識の量ではありません。深く「思考」することで問題の本質をつかみ、いくつかの基礎事項を適切かつ迅速に「処理」して体系化し、その結果を答案の上で相手にきちんと説明できるように「記述・論述」していく力です。

例えば東大の世界史の試験では、指定された語句を使って1つのテーマを論述させる問題が出されます。指定語句は決して難しくはありませんが、時代・地域がバラバラな単語を1つの体系にまとめていくことが要求されます。「どれだけ知っているか」ということよりも、「どれだけ理解し、どれだけ正しく説明できるか」という能力が求められているのです。

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こだわるべきは「得点」よりも「内容」

以上、述べてきたような力は、一朝一夕に身につくものではありません。中学生のうちから良質な問題にじっくりと取り組み、じっくりと考えて正確に表現していく訓練を継続的に行っていく必要があります。 中学受験を経験した方は得点にこだわるあまり「記述問題を白紙で出す」、「めんどうな問題を後回しにして取り組もうとしない」といった傾向があります。「点数がよければそれでいい」、という考え方をせずに、時間がかかっても一つひとつの問題にていねいに取り組む癖をつけていくとよいでしょう。

保護者の方も得点至上主義にならないようお願いいたします。お子さまの答案をご覧になるとき、得点が伸びていなくても記述問題にチャレンジしていれば、ほめてあげてください。得点にばかりこだわり、平均点との比較で一喜一憂してしまっては、お子さまも得点を意識するクセから抜け出すことができなくなります。


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スロースタディのすすめ

バランスよくさまざまな教科を学習し、ゆっくりとじっくりと噛み締めるように良質な問題に取り組むこと。Z会ではこれを「スロースタディ」と呼んでいます。先を急ぎがちになる中高一貫校の方、とくに学力の根幹を作る期間である中1・中2の方々にぜひ意識してほしい学習法です。

Z会では、思考力を重視して無理のない進度で良質な問題に触れてもらうことを指導方針にしています。取り組む問題の量よりも質を追い求める教材、一人ひとりの答案に目を通して個別に力を伸ばしていく添削指導。これらが大学入試で必要になる思考力・記述力につながっていきます。

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