八王子学園八王子中学校・高等学校の、1期生たちの成長も目の当たりにしてきた教科担当インタビューもいよいよ最後の1教科。
第5弾を飾るのは、社会を担当されている吉村先生。実際の授業の様子などお話をうかがった。
中学校受験を経験した生徒たちは、受験のために社会を勉強しているので、一般の中学校の歴史の教科書の内容はだいたい知っているのが現状だ。そのレベルで教えると得意な子はあまり面白さ感じることができないので、授業には工夫が必要だという。「日本史については、教科書よりも内容を深めて世界史の分野も含めた話をしています。同時代に世界で何が起こっていたかということにも興味を持たせ、飽きないような工夫をしています」と吉村先生は話される。
内容を深めることと楽しいと思ってもらうことの両立
内容を深めることで、高校になってからの歴史の勉強がスムーズにいくようにと考え、授業を進めている。たとえば、古代ローマの分割統治を、ある程度中学生にもわかりやすいように説明したり、政治の形態について、なぜギリシャは民主制でローマは共和制なのかということを中学の授業でも話している。こうした勉強は、歴史が好きな子にとっては、自分はレベルの高いことを学んでいるという満足感を得ることにもつながる。一方で、社会は中学受験の時の成績の差が大きい科目で、苦手な子も少なくない。そういう子にも、できるだけ歴史を楽しいと思って欲しい思いがあるという。「内容を深めることと楽しいと思ってもらえることは、いつでも両立するテーマではないですが、できるかぎり両立されるような授業を心がけています」と吉村先生。
関心をひきつける授業をするために
「高3などは受験の演習ですので、どれだけ短時間に知識を提供できるかということになりますが、中1の授業は、教壇を舞台のようにして、何かにたとえて演じてみたり、一人二役演じたりしながら、生徒に考えさせます。そういう授業は楽しいですが、体力がいりますね」と先生は笑顔で話される。
内容を深めながら、楽しく関心をひきつける授業をするにはどうしたらいいか、いつも考えているという。
空襲をテーマにした紙芝居の衝撃
学園モットーにまつわる特別授業で得たもの
「社会科は、『人権を尊重しよう、平和を心につちかおう』という学園モットーに一番近い教科だと思っています」と吉村先生は話す。そういった意味から、夏期授業では普段の授業の中では勉強できない活動をした。昭和20年8月に地元である八王子で空襲があり、大勢の方が亡くなっている。その方の体験談をうかがったり、地元のサークルの方がつくっている空襲をテーマにした紙芝居を鑑賞したりといった授業だ。紙芝居は、疎開で都会から来ていた子どもが亡くなり、かわいそうに思った親が子どもに似た地蔵にランドセルをかけたという実話をもとにしたものだという。「紙芝居はインパクトが強かったようですね。その後、実際にそのお地蔵さんを見にいった生徒もいたようです。心に残る部分も大きかったのではないでしょうか」と先生は話される。
戦争を歴史上の知識としてだけでなく、人々の生活や心に残した傷跡も含めて、深く学んでほしいという学校としての姿勢が表れている授業だ。
「歴史を動かしている力」を知ってほしい
さらに、歴史を学ぶ意義について吉村先生は「深く学ぶという話をしましたが、それは細かい知識を覚えることではないです。歴史を動かしている力、どうしてこうなっているんだろうというところをわかってほしいと思っています」と話される。
たとえば、古代の律令国家ならば、どうしてその時代、日本が中国から律令を持ってきて、それをベースとした国作りをしようとしたのか、その後、なぜ解体したのか、荘園制ができたのか…と、背後にある理由や因果関係を理解してほしいと考え、わかりやすく伝わるような授業を心がけているという。
「細かい知識は後になっていくらでもついてくるので、中学時代に私が話したことが、どこかで残っていて、繰り返し勉強する中で役に立つといいなと思います」と先生は話される。
知識として歴史を知るだけでなく、その背景や理由を深く学ぶことは、中学生にとって、その後の学ぶ姿勢や学力の伸びに大きく関わっていくに違いない。
普通の勉強をすることが第一歩
基本的なことを知っていることがすごく大事
社会の受験勉強の仕方について、「中学受験の教材の太字レベルの重要な用語は、ただ覚えるだけでなくて、しっかり言葉を理解することが大切です。言葉だけを知っていて、空欄補充ならできるが、どれだけ説明できるかというとできない子が多い。問題作成では、たとえば、『自由民権運動』という言葉を空欄に入れさせるのではなくで、それがどういうことなのか説明させることを意識しています」と先生はアドバイスする。
さらに、「それぞれの時代に出てくる言葉が何を意味しているのか、人物がどんなことをしたのかを学ぶことが歴史を学ぶこと。地理でも同じで、どこにどういう生産物があるとか、どこにどんな港があるとかでなく、どうしてここにこんな港があるのかとか、なぜここでこういう生産が盛んなのかとか、きちんと理解してほしいと思います」と受験勉強にかぎらず、その先の勉強にもつながる話をしていただいた。
中高一貫の教育の中で、知識だけを詰め込むような受験勉強に振り回されることなく、じっくりと学んでいく時間が持てることが素晴らしい。さらに、それを生徒にとって楽しく意義ある時間にと、授業をされる先生の熱意を感じた。そこで学んだことは、大学受験のための本質的な力になるのみならず、将来にわたっての教養として身についていくのではないだろうか。
八王子学園八王子中学校・高等学校の説明会日程
説明会名 | 日時 | 詳細 | 定員 | 予約 |
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入試問題ガイダンス&説明会 | 1月 12日(土) 10:00~11:30 | 入試問題の出題傾向について、各教科の出題者よりご説明します。教育方針・入試要項の説明と個別質問コーナーあり。 | 各100組 | ご予約はこちら |
入試模擬問題体験&説明会 | 12月 16日(日) 10:00~11:30 12月 16日(日) 13:00~14:30 |
入試模擬問題を体験していただけます。出題担当者より解法などの説明あり。 保護者の方には、教育方針・入試要項の説明と出願や入試当日の注意をご説明します。個別質問コーナーなどあり。 |
各100組 |