八王子学園八王子中学校教員インタビュー 「自己表現合宿とは」

八王子学園中学校では1年生を対象に、元八王子の劇団新制作座の合宿所にて、7月13日~15日、2泊3日の「自己表現合宿」を実施した。
その目的や実際の様子について、中学1年生の担任をされている吉村先生にお話をうかがった。中学校の新設と同時に、新たな試みとして始まった「自己表現合宿」という活動。初めての行事を作り上げる先生や劇団の方々のご苦労や生徒のみなさんの成長が伝わってくるインタビューとなった。

校歌の伝える学園モットーを深く理解して現代風によみがえった学園音頭を伝統に!

八王子学園八王子中学校・高等学校 よみがえった学園音頭

インターエデュ(以下、エデュ):「自己表現合宿」とは、どのような行事ですか? 内容を教えて下さい。

吉村先生: 「自己表現合宿」は、小山教頭が長年あたためてきた企画です。企画立案の詳細は、学年の教員が中心になって決めていきました。2泊3日という日程の中で、劇団の方々と共同で作り上げることを考えていったわけですが、新たな劇を作るには時間が足りないため、元々あるものを発展させる方向でまとまっていき、学園の校歌と学園音頭を元にしようという案が出てきました。
実は、学園音頭については、ここ数十年お蔵入りしていて、存在は知っているが、誰も見たことがないという形になっていたので、劇団の方にアレンジしてもらい、現代風によみがえらせることを考えていきました。
校歌については、歌詞の意味等を掘り下げて、しっかり理解して歌うこと、また、歌う中でのきちんとした発声や姿勢をプロの目から見て指導していただくことにしました。
この二つをきちんとしたものにしようということで、劇団の方と相談して決めました。

八王子学園八王子中学校・高等学校 吉村先生

エデュ: 「自己表現合宿」の目的、ねらいはどういったことでしょうか?

吉村先生: 歌を歌ったり、踊りをすることの前提として、基本的な言葉遣い、姿勢、歩き方、所作が自然に身につくようにということがあります。劇団の方々は、基本的な礼儀作法や所作を常に大切にされていますので、生徒達にも指導していただければと思いました。
本校では、特に道徳教育を重視していますが、日頃の道徳の授業は、教室で聞くものになってしまいます。それを身体を使いながら、身体にしみ込ませようというのが、まずひとつあります。

もうひとつは、学園が大事にしている歌や踊りには、学園モットー「人格を尊重しよう、平和を心につちかおう」という思いが込められているので、踊りの実践、歌の練習の中で、そういったことを身体を通じて感じ、心の中にしみ込ませてほしいということですね。

エデュ: 生徒さんの様子はいかがでしたか?

吉村先生: 最初は消極的でしたね(笑)。どうしてこんなに何度も校歌を歌わなければいけないのかと文句を言ったり、踊りの中では、「みんなで仲良く学校を作って行こう」という歌詞の内容に合わせて、男女が手をつないでニッコリするところがあったのですが、照れもあったようで、かなりブーイングがありました。けれども、発表会もクラス別にやりましたので、だんだんに対抗意識が出てきて、最後はかなり熱心にやってくれたと思います。クラスごと個性があるので、パフォーマンスにもそれぞれ特色が出てきて面白かったです。自分達で作り上げていく意識が高まり、どうすれば客を惹きつけるかといったことにも、プロの方のアドバイスを受けながら考え、時には、自分から意見するような姿も見られました。

規則正しい生活の中、学校でのルールを見直す。協調性を育み、友情を深める機会に!

八王子学園八王子中学校・高等学校 よみがえった学園音頭

エデュ: 「自己表現合宿」を通じて、生徒さん達が変わった面、今後に生かしていかれることは、どのようなことでしょうか?

吉村先生: 2泊3日でそれほど大きく変わるということはないですが、校歌をしっかり覚えてくれたと思うので、今後の行事や卒業後も折に触れて歌って、学校の理念を大切に思ってくれればと思っています。
学園音頭は秋の運動会でもう一度披露して、来年度以降は、先輩が後輩に指導し伝えていき、八王子学園と言えば学園音頭という伝統を作っていってほしいと思います。

入学して4ヶ月経って、友達関係も密になり、良い意味でも悪い意味でも慣れが出てきて、時間やルールを守ることについて、ややルーズになっているところもありました。劇団の方からそういった面をかなり厳しく注意していただきましたので、それを再確認し、気持ちを引き締める意味で良い機会になったのではないでしょうか。
6時起床、10時就寝という中で、昼間の練習の時は練習に集中し、夕食後はプライベートの時間というメリハリのある生活を意識させました。風呂やトイレ掃除、庭掃除なども分担して行い、生活面を大切にした点も子ども達にとっては良かったと感じます。プライベートをともにすることで、クラス間の協調性、友達の輪を育むことができたというところもありますね。

エデュ: 中学生を指導する上で、どのようなことに気をつけていますか?

吉村先生: 中学生は教員の言っていることを素直に聞いてくれますが、一度注意しただけでは行動に移せないといったところがあります。何度も繰り返し言って、当たり前のことを当たり前にできるように、生活指導にかなり力点を置いて接しています。

主体的に学び、行動できる人間を育てたい!知識だけでなく、日頃からものを考える習慣を

吉村先生

エデュ: 受験生やその保護者の方へメッセージをお願いします。

吉村先生: 本校の受験では、単純に知識があるかどうかということでなく、簡単な基本的な知識を使って日頃からものを考えているか、行動しているかということを重視しています。細かい知識よりは、基本的な各教科の事柄を繰り返し学んで、それを使って日頃からものを考えるという習慣をつけてくれれば、おのずと入試問題にも対応できる力がついてくると思います。主体的に行動できる人間を育てたいと考えていますし、自ら学び、行動する態度を持った生徒さんに来てほしいと思っています。

新しい取り組みの中で、生徒にとって、また学園にとってプラスになるものをと考え、実際の活動を計画された先生方、劇団の方々の強い気持ちが伝わってきた。劇団の方々と共に作り上げるという独自性を持ったこの行事は、今後さらに進化しながら継続されていくことだろう。八王子学園にとって、またひとつ新しい伝統が生まれたことを素晴らしいと感じた。

八王子学園八王子中学校・高等学校公式ホームページはこちら