教頭小山貢先生に聞く 中高一貫校の教育プログラム

前回、八王子中学の佐藤校長に、学校の教育理念やビジョンなどについてお話を伺ったが、今回は教頭先生に具体的な教育プログラムなどについて詳細に伺った。

八王子高等学校は、ここ数年飛躍的な進学実績を示しているが、それが中高一貫校として再スタートを切ったことにより、今後、どのような進学実績を伸ばしていくのか、という点は保護者にとっても興味深いに違いない。

中高一貫の6年間で、無理のない「人間教育」と「学力向上」が可能となります。

八王子学園八王子中学校・高等学校 中高特進教育
インターエデュ

八王子中学校の教育プログラムの特徴をお教えください。

小山貢教頭先生

本学は、公立中学に比較して年間約800時間も授業時間を多くとっています。中学3年になると、第7限目の授業が週に2日ほどあります。また夏休み期間の前後に延べ12日間の特別授業も用意されています。

こうした特徴的なカリキュラムに加えて、2012年から中学を併設したことにより、中高一貫で6年間という長い期間をかけて計画的に学習指導ができるようになったので、さらに効率的・効果的な教育カリキュラムを編成することが可能となりました。それが「先取り学習」というものです。本学では中学3年から英語・数学・国語の3教科について、高校1年の学習内容に取り組み始めます。これまで高校の学力養成という点でも様々な取組を進め、その取り組みが功を奏して、東大合格者を輩出するまでに至っているのですが、私たち教員の側としては“高校が4年間あれば、もっと成果が出せる”という思いがありました。中学を併設して、中高一貫6年間でカリキュラム構成ができるようになったことで、それが実現したのです。6年間あれば、大学受験のための効果的な学力向上を目指しつつ、本学の目指す『人間教育』にも十分に時間を充てることができるのです。

しっかりした『人間教育』と、効果的な受験対策の学力向上をバランスよく実践できるようになったことは、中学併設の最大の利点であると考えています。

八王子学園八王子中学校・高等学校 小山貢教頭先生
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高校1年の内容に取り組むことになると、ついていけない生徒も出てくるのでは?

小山貢教頭先生

そうしたことのないように、フォローアップのプログラムも同時に取り入れています。おっしゃる通り、中学3年で高校1年の内容を学習するためには、しっかりした基礎力が不可欠です。逆にいえば、基礎力をしっかり身に付けておけば、中学3年で高校1年の内容を学習することは、それほど難しいことではありません。そこで、しっかりした基礎力を着実に修得するための「チェックリピートプログラム」と「10分ドリル」というプログラムを取り入れています。
先取り学習の対象科目である英語・数学・国語については、単元ごとの復習テストを実施し、その結果が芳しくない生徒については、放課後に担当教員がリピート学習をサポートします。もともと高校で実施していたのですが、中学においてはより強化した形で取り入れました。10分ドリルも同様に基礎力強化のためのプログラムです。

また、「東大学生コーチ」という制度もあります。これは本学の卒業生を含む現役東大生による個別指導です。週に2回ほど、生徒たちの学習をみてもらうようにしています。  こうしたさまざまな学力向上のための施策を用意することで、ひとりの脱落者も出すことがないよう、最大限に尽力する体制を整備しています。

思いつきではなく、実績のある教育プログラムを多様に取り入れています。

八王子学園八王子中学校・高等学校 小山貢教頭先生
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八王子周辺には私立の中学がいくつかありますが、八王子中学校の特徴はどんな点にありますか?

小山貢教頭先生

本学は、八王子という場所で、長らく高校教育に取り組み、さまざまな教育プログラムや指導の仕組みを導入して、一定の成果を上げています。そうした実績の裏付けがある教育プログラムや仕組みを中学に導入できるという点は、本学の大きな特徴のひとつといえると思っています。
これまでやってきたことですから、ノウハウもあるし、経験値も豊富にもっているわけです。単なる思い付きで何か新しいことをはじめるというのではなく、実績のあることに愚直に取り組むことで、中学教育においてもしっかりと成果を積み重ねることができるものと考えています。

また、全体的な仕組みとして、学習のしやすい環境を用意することも大切です。学力がある一定のレベルに達すると、そこから先は「自学自習」ということが重要になってきます。そのため、時間や場所に制約されない自学自習のための施設を用意しています。具体的には、廊下などに自習ができるスペースを設けていますし、職員室の前にはホワイトボードを設置して、生徒から質問などがあれば、そのホワイトボードを使って、先生方が個別に指導できるよう配慮しています。自習室も3つ用意してあり、自由に使えるようにしています。

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今後、どのような教育を目指していきますか?

小山貢教頭先生

生徒たちに成長力を身に付けさせたいと思っています。
中学入学から高校卒業までの6年間で一定の成長をさせることはもちろん大切ですが、それ以上に、たとえば高校を卒業してからの10年、20年先の成長につながるような、“成長し続けるための下地”のようなものを作ることがより重要だと考えています。情報リテラシーやコミュニケーション能力というものも、そうした成長力に欠かせないものだと考えています。

また、「リーダーとしての人間力」も大切だと思っています。
よく「トップ人材」という表現が使われますが、トップというものは、ひとつの組織に一人です。私はトップを育成しようとは思いません。さまざまな分野でリーダーとなり得る人材を育成したいと考えています。ひとつの組織の中にいろいろな役割があれば、それぞれの役割を担うグループの中にリーダーは不可欠ですし、リーダーが一人である必要もありません。

ですから、リーダーになり得る人材を育成することは、広く社会に貢献することにつながるものと思っています。単に勉強ができる、というだけではリーダーにはなり得ませんし、まさに本学の『人間教育』が目指すひとつの在り様が、多様なリーダー人材の育成であると思っています。

八王子学園八王子中学校・高等学校 説明会で熱心に語りかける小山教頭先生
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八王子中学校を知るための、イベント等についてお教えください。

小山貢教頭先生

さまざまな説明会、見学会をご用意しています。特徴的なイベントをいくつか紹介します。 ひとつは「ライブ授業」というものです。
このイベントでは中学の実際の授業風景を見学していただくことが可能です。単に学校側から一方的に説明するだけではなく、実際の授業風景をご覧いただくことで、本学の良さをわかっていただけると思います。

それと、全学授業公開というイベントがあります。
これは中学の授業のみならず、高校の授業風景も自由にご覧いただけるというものです。本学は中高一貫校ですから、中学の様子を見ていただくことがもちろん最優先なのですが、その先にある高校についてきちんとオープンにして、ご納得いただくとこが大切だと思っています。
説明会等の日程等については、Webサイト等でご確認いただければと思いますが、ぜひ一度、本学を実際に見ていただきたいと思います。

取材のために八王子中学校にお邪魔し、職員室前の廊下を歩いていると、片側には大きなホワイトボードがある。そこでは、先生がボードを使って、生徒からの質問に答えている。同じ廊下の反対側には、パーテーションで区切られたブースがいくつも並び、その中のいくつかでは生徒が、教科書を開く。
教頭先生のお話を伺い、それらが「自学自習」のためのスペースだとわかる。微に入り細にわたって学習環境が整備されている点を、とても魅力的に感じることができた。

やはり、一度は実際に学校を見学してみることをお勧めする。入学案内やWebサイトだけではわからない、さまざまな学校の特徴が見えてくるだろう。