学校長佐藤寛文先生に聞く 八王子学園中学校が目指す「人間教育」

中学受験における学校選択に際しては、学校案内などの印刷物やWebサイトなどに掲載される情報などを参考にすることが多いと思われるが、やはり、当該学校の関係者自身によって語られる教育に対する考え方や、具体的な取り組み内容などがとても重要である。検討の対象となる学校が新設校であれば、なおさらであろう。

今回は、本年4月に中学校を新設・開校した八王子学園八王子中学校の学校長 佐藤寛文先生にお話しを伺った。八王子中学校の教育理念や、指導方針などを理解するための一助になれば幸いである。

若い時期からの「人間教育」が必要だと考えました。

八王子学園八王子中学校・高等学校 佐藤寛文学校長
インターエデュ

八王子学園として、中学校を新設した経緯をお聞かせください。

佐藤寛文学校長

本学園のモットーは「人格を尊重しよう、平和を心につちかおう」というものです。つまりは『人間教育』を、その基本においているということです。これまで高校において、この学園モットーを実践する教育を実践してきており、一定の成果を上げることができていると自負しています。

しかし、より深く『人間教育』に取り組もうとすると、高校3年間よりも、中学3年間を含む6ヵ年あったほうが、より『人間教育』を実践しやすいだろうという想いがありました。 また、同窓会の方々からも、ぜひ中学校を併設してほしいというご要望が、折にふれて寄せられていたこともあり、八王子中学の新設・開校を決定しました。用地の手当てなどを含めて、6年ほどの準備期間を経て、2012年4月の開校に至りました。

インターエデュ

『人間教育』を実践する上で、中高一貫の6年間がより教育効果を上げられるとのことですが、進学面でもプラス効果があるとお考えですか?

佐藤寛文学校長

もちろんです。
直近の高校における進学実績としては、国公立大学や早慶上理などの難関私大、そしてMARCHなどの中堅私大への合格者を多数輩出していますが、高校3年間の進学指導の結果です。ここに中学3年間が加わり、6年間を通じての指導が可能になったことで、将来的にはさらに高い実績を作っていけるものと確信しています。

「人間教育」は、創立時より変わらない教育理念です。

インターエデュ

八王子中学校の教育理念、ビジョンなどについてお聞かせください。

八王子学園八王子中学校・高等学校 佐藤寛文学校長
八王子学園八王子中学校・高等学校 人格の尊重
佐藤寛文学校長

冒頭で申し上げた通り、本学園のモットー、理念は「人格を尊重しよう、平和を心につちかおう」というものであり、端的にいえば『人間教育』ということになります。
そもそも本学園の歴史は、創立者である市川英作が、昭和3年に八王子市内の有志とともに「多摩勤労中学」を創ったことに始まります。創立の時点で市川は『人間教育』という理念を掲げており、その理念が今日まで受け継がれてきており、また今後も変わることはありません。

しかし、その教育内容は時代とともに変遷していきます。たとえば、今日ではグローバル化の進展が著しいという環境変化を受けて、語学教育に力を入れたり、日本が技術立国であることを踏まえて、理数系のカリキュラムを充実させたり、といった形で時代に即した『人間教育』を目指しています。グローバル化への対応ということについて、本学では、海外の学校との国際交流に力を入れています。中国、オーストラリア、ドイツの一流高校と姉妹校を締結しており、中学ではオーストラリアでの語学研修も予定しています。

余談ですが、昨年の東日本大震災の際には、本学と交流があるドイツの学校が義捐金を送ってくださいました。その義捐金は、本学を通じて、陸前高田をはじめとした被災地の中学校にお送りしました。そういう交流もあります。
ですから、生徒自身が望めば、海外留学などの機会も用意されており、グローバル化への対応のみならず、さまざまな体験を通じて、生徒自身に夢をみつけてもらいたいと思っています。
またコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力といった実社会で必要となる能力の開発をも見据えています。
大学受験に向けた学力の向上はもちろん大切ですが、受験対策一辺倒ではなく、学校生活の中でさまざまな体験をしてもらうことで、自身の夢を明確にし、夢の実現をモチベーションとして、自律的にがんばっていける人材を育成したいと思っています。

人間性の向上と学力の向上が、教育の両輪です。

八王子学園八王子中学校・高等学校 佐藤寛文学校長
八王子学園八王子中学校・高等学校 先人から学ぶ教育指導の資料
インターエデュ

この4月に入学した新入生たちの様子はいかがですか?

佐藤寛文学校長

中学生活が始まって、まだひと月も経っていませんが、みんな明るくて元気です。
本学では入学直後に2泊3日のオリエンテーション合宿を実施したのですが、そこでは生徒同士の親睦を深めることに主眼をおいています。その行事のおかげもあってか、生徒同士がとても仲良くなり、長年の友人のような親密な人間関係を築けているようです。時間がある時は、私自身が教室に出向いて、生徒たちと一緒に昼食を摂ることもあるのですが、みんな物おじすることなく、楽しくコミュニケーションがとれます。
また、校長室からは中学生の教室が見えるのですが、休憩時間などは教室の前にある中学の専用グランドで駆け回っている様子が見られます。みんな元気で、しっかりしていて、これからの成長がとても楽しみです。

インターエデュ

最後に、これから中学受験を控えたお子様をもつ保護者の方にメッセージを お願いします。

佐藤寛文学校長

学力の向上は大切ですが、同時に他人とスムーズにコミュニケーションがとれることや、自分の意見をしっかりとプレゼンテーションできる能力なども社会に出れば必要になります。だからこそ『人間教育』が必要だと考えています。もちろん、だからといって『人間教育』だけをやっているわけではなく、人間性の向上と学力の向上のバランスが欠かせません。本学では、この2つを教育の両輪として取り組んでいきます。

とにかく、ぜひ一度、本学にお越しいただき、実際の学校の様子をご自身の目でご覧いただきたいと思います。それが本学をご理解いただくための最善の方法だと考えています。『人間教育』というものは、言葉だけではなかなかお伝えしにくいものだと思っています。しかし、実際に本学にお越しいただいて、明るく元気に活動している生徒たちの様子などをご覧いただければ、その一端を感じていただけるはずです。
学校説明会や見学会など、多くの機会をご用意していますので、ぜひご来校いただきたいと思います。

八王子学園八王子中学校・高等学校 佐藤寛文学校長

佐藤校長にお話をうかがいながら生徒たちとの交流について話が及ぶと、とても優しい表情でお答えいただいたのが印象的であった。

八王子学園八王子中学校は新設校ではあるが、やはり高校での教育実績があるだけに、新設校とはいっても、しっかりとした教育理念に基づく、盤石の教育体制が整っているのだという、教育に対する自信が伝わってきた。