東京純心女子中学校・高等学校は、カトリック精神に基づいたこころの教育を重視する一方、学習面でも高いレベルの教育を行い、難関私立大学を中心とした進学実績を着実に伸ばし、最近は特に、医療系学部への進学者数増加が注目される。また「英語の純心」と呼ばれ、もともと英語教育には定評があったが、今年度から、さらにカリキュラムに大きな改革を行っているという。
岩崎淳子校長に教育理念を中心にお話いただき、英語科主任の三田浩子先生に『英語の回路』をつくることに重点をおいた新カリキュラムについてお話をうかがった。また、実際に英語の授業を見学させていただくこともできた。
新たな教育カリキュラムに取り組む先生方の熱意と温かな眼差しを感じる取材となった。
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インターエデュ(以下、エデュ):御校の教育理念をお聞かせください。
岩崎淳子校長(以下、校長):校名の「純心」というのは「キリストの母、マリアの純な心にならいたい」ということから創立者がつけたものです。 創立者のシスター江角は、お茶の水女子大、東北帝大で勉強した方で、仙台の地でキリスト教に出会い、人生観を覆された方です。フランス留学から帰国後、カトリックの聖地 長崎で純心女子学院を設立しました。その10年後、長崎に原爆が投下され、213名の子どもたちを1度に亡くし、あまりの悲しみで学校を閉じようと考えた時、それに反対したのは、子どもを亡くした親御さんたちでした。これから純心は、特に女子教育の場として必要だからと、励まされたのです 。その後、東京に姉妹校をとの願いで、ここ八王子の地で高校からスタートし、2年後に50周年を迎えます。
シスター江角の残した言葉の中に「一人ひとりを大切に」「自分がしてほしいことを、相手にもしてあげなさい」という言葉があります。このやさしい単純な言葉が、純心のこころの教育の基本です。また、校歌にも「叡智(えいち)の泉 真心(まごころ)の炬火(ともし)」とあります。「叡智」とは、単なる知恵ではなくて、誠実に考え、語り、行動できること、「真心」は、自分のしてほしいことを相手にもするということで、そうした人間になってほしいという願いが込められ ています。さらに、純心の再出発は原爆体験がその根幹にあるので、人類の平和は大きな課題です。「優しさと賢さを持って世界に目を向けられるような女性になってほしい」というのが、私たちの願いです。
エデュ:医療・看護系の学部への進学増加は、教育理念とつながっているのでしょうか。
校長:はい。人の役に立ちたいという気持ちは、強制しなくても子どもたちの中に育っているのを実感しますね。「将来、どうなりたいか」の問いに、「何か人の役に立ちたい」と答える生徒が多いです。それが自然に、医療や看護を選ぶことにつながっていると思います。
エデュ:毎朝の朝礼について教えてください。
校長:1日の始めにあわただしい気持ちを落ち着かせるために放送で聖歌が流れ、それに合わせて生徒たちの歌声が学校中に響きます。聖書で読む箇所は、年間通して決められていて、わずか数行ずつですが、6年間でだいたい読めますね。
先日、卒業生のお母さんから「ホントに純心に入れて良かった」とお電話をいただきました。ご自分が悩んでつらい気持ちを打ち明けた時、お嬢さんが「そういう時はここを読んでみて」と聖書を開いたそうです。その箇所が求めていた気持ちにピッタリだったそうです。生徒たちが、聖書の中に自分のこころに残る言葉を見つけ、人のために役に立ててくれたことをうれしく思います。
エデュ:純心の教育の特色を教えてください。
校長:今年の学校案内には、ページナンバーの横にシスター江角の言葉を載せています。 「長く生命を持つよい本をよみなさい。智恵と心の糧となる本を。」この言葉は図書館教育に力を入れるきっかけになりました。純心の卒業生でもある素晴らしい司書教諭の助けもあり、図書館活動を充実させています。 「願わくば、純心の子等の蒔く種がみな善い種であるように。」これは、労作の根本的な趣旨で、植物を育てる苦労を実感させながら、それが実っていくのを見ることで、自然の豊かさやその法則を学びます。 「何もしなければゼロなのです。小さくてもすればそこに何か生まれます。」この言葉は「マリアさま、いやなことは私が喜んで」という学園標語に通じます。誰もしたくない仕事でもさりげなくやってあげるということ、その実際の訓練の場が生徒たちにとってはトイレ掃除だと思います。年を重ねていくうちに、苦にしないで身に着けていけますね。
静まりかえった教室に、シスター森が英単語の発音をする声が響く。生徒達は単語のスペルを書き、同時に日本語の意味を書いていく。中学1年生の英語の授業、始めに行われていたのは単語のテストだ。
次は前回の復習。先ずはシャドーイングでは、プレーヤーから流れる英文とほぼ同時に発音する。ほとんどの生徒が本文を暗記しているのがわかる。続いてその内容について先生が英語で質問し、生徒がそれに答える。さらに、形を変えて反復練習が行われる。生徒が興味を持ちそうな有名人の写真を先生が用意し、それを指して、「Who is the man?」「He is Matsumoto Jun.」と習った表現を繰り返し練習する。
実際に教科書の文に入るのはここからだ。プレーヤーの音声や先生の音読に続き、生徒たちが英文を音読する。音読、シャドーイング、ペアワーク、暗唱といくつもの活動を繰り返しながら進んでいく授業。英語を英語のままの形で自然に身につけることができるよう、様々な工夫がされているのを実感した。確かな基礎を築きながら学んでいく生徒たちの英語力の進歩に期待が持てる。
インターエデュ(以下、エデュ):英語の純心として定評がある御校で、敢えて新しい英語のカリキュラムをスタートさせた理由を教えてください。
三田浩子先生(以下、三田先生):この10年のグローバル化で、社会に出た時、英語を即戦力として使うことが求められるようになりました。その結果が大学入試の長文化ということでしょう。ビジネスの世界では、英文の読み方にスピードが求められます。そのためには『英語の回路』を身につける必要があることを実感しました。英語を英語のままで理解し、英語の論理でものを考える力が求められるということです。
エデュ:今までと大きく変わったのは、どのような点でしょうか。
三田先生:まず、テキストを変えました。今まで、「プログレス」を使っていましたが、内容理解や文法の説明に授業が費やされていました。けれども、最初にたくさんの理論や情報を教えるよりも、情報を単純なものに絞って英語を英語のままで取り込むような期間を作って、その後に複雑な情報を足していくようにしたらどうだろうかと検討し、今回の新カリキュラムに至りました。単純なものを徹底してやらせ、身にしみ込ませるために適したものをと探し、「サンシャイン」(開隆堂)を使うことにし、中学内容を中学3年の前期までに終える予定にしています。
エデュ:授業の中で工夫されている点はどのようなところでしょうか。
三田先生:とにかくトレーニング重視です。新しい表現を習ったら、聞いて、使って、徹底的にいろいろな形でトレーニングをした上で、最後に書いて定着させるトレーニング型に変えました。また、単純なものを定着させるために、今まで以上に意図的にスパイラルに復習するようにしています。今までは前回の復習をして次に入る程度でしたが、前の前まで戻って、さらにその前まで戻ってと繰り返し復習します。ペアやグループ、全員で音読したりと様々な活動をしますので、活動時間は以前の2、3倍になっていますね。
エデュ:中学から高校へと、それぞれどの程度の英語力を育成していきたいとお考えでしょうか。
三田先生:中3で海外研修(希望者対象、オーストラリア17日間)がありますので、自分のことや周りのことが紹介でき、相手のことがある程度わかるような、日常的なレベルでの英語を完成させようと考えています。
高校段階ではアカデミックな英語、社会の中で仕事についても、それほど困らない英語力をつけてあげたいと思っています。来年から、高2文系の応用クラスでは、ネイティブが作文指導をする授業を週2時間行い、そこでは簡単なものから始めて、最終的には、意見論文が書けるように指導する予定です。英語の論理をきちんと身につけて物を書いたり、読んだりすることができるようになってほしいですね。
エデュ:英語を通じて、生徒さんに伝えたいことはどういったことでしょうか。
三田先生:私は、どこでもどの時代でもしっかり自分で生きられて、周りの人のために働けるような人を育てたいと思っているんですね。本校はミッションの学校ですので、人が喜んでくれることを自分の喜びとするという教育をしています。自己実現と周りに対する貢献のために、英語を勉強して良かったなあという力をつけてあげたいと思っています。
内容 | 開催日 | 時間 | 場所 |
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中学校説明会 | 10月6日(土) | 10:30~12:30 | 本校 セント・メリー・ホール |
11月7日(水) | 10:30~12:30 | 本校 セント・メリー・ホール | |
12月1日(土) | 10:30~12:30 | 本校 江角記念講堂 (小6対象「入試体験」あり〈要予約〉) |
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高校説明会 | 10月20日(土) | 10:30~12:00 | 本校 会議室 |
11月17日(土) | 14:00~15:30 | 本校 会議室 | |
中学・高校個別相談会 | 1月12日(土) | 13:00~16:00 | 本校 会議室 (小6対象、入試直前、はじめての皆さんのため) |