inter-edu's eye

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1917年(大正6年)、当時の画一教育を打破し、小学校教育のよりよき改造と進歩に寄与するための実験学校としてスタートした成城学園初等学校は、自由な校風の中、オリジナリティーにあふれる教育を実践し、高い評価を受けている。
同校の特色ある教科のひとつである「散歩」の授業を見学させていただくとともに、立木和彦校長に、教育方針や特色ある教育の内容を中心に幅広くお話をうかがった。
子ども一人ひとりの個性を大切に、温かく見守る先生方の思い、古き良き伝統を大切に継承しつつ、常に時代に即した変革を目指す同校の教育に対する熱意が伝わってくるインタビューとなった。子どもたちの生き生きとした表情が印象的な小学校。心から学校生活を楽しむ子どもたちの笑顔があふれている。

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子どもたちのために何をしてあげたらいいのか?

写真:成城学園初等学校

教師は常に研究を重ね、時代に即した教育を実践!

成城学園初等学校は、創設以来一貫して「子どもを中心に考えた学校づくり」を目指し、「個性尊重の教育」「自然と親しむ教育」「心情の教育」、「科学的研究を基とする教育」の4つの希望理想を掲げている。
立木和彦校長は「今、子どもたちは何を求めているのか。今、子どもたちのために何をしてあげたらいいのかということを常に考えて変革を行っている」と同校の教育に対する姿勢を語る。

― 100周年に向けた、新たな教育改革 ―

今年で創立95年を迎える同校だが、100周年に向けて新たな教育改革を考えている。
改革内容は「基礎・基本をしっかり身につけさせ、さらに人間関係を深めていける場としての学校づくり」だという。「人間関係を深める場としての学校」という点について校長は次のように話す。「今の時代、子ども同士の人間関係がうまくいかないことが多くなり、いじめ、不登校、ひきこもりといった問題が起きている。その一因はコミュニケーション能力の乏しさにある。少子化、核家族化を背景に、昔は日常生活の中で自然に身につけてきた対人関係能力や社会性・規範意識・基本的な生活習慣などを十分に身につける機会が少なくなって来ている。このような現実をふまえ、子どもたちの人間関係作りに学校も積極的に関わっていく必要性を感じている」と現代の家庭教育を見つめ、改革の道を示す。
成城学園初等学校では、先生は教師であると同時に研究者として日々の教育活動にテーマを持って取り組んでいる。豊富な情操教育、創造活動、自然の中での体験、効率的に基礎学力を育成するためのカリキュラムの中、子どもたちにどのような成果が表れるかの研究的観点でよりよい教育を目指している。

  • 写真:一輪車
  • 写真:クラスデー
  • 写真:散歩の授業
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多彩な情操教育、自然の中での経験や遊びを大切に!

写真:劇の会

子どもの人間形成の基礎になる時間をのびのびと

成城学園初等学校には、独自の教科が数多くあり、発達段階に応じた教科編成が考えられている。「劇」「舞踊」「映像」「遊び」「散歩」など、聞き慣れない教科が並び、各教科についても独自性のあるカリキュラムで指導を行っている。
たとえば、いわゆる主要教科の「数学」においても学ぶプロセスに工夫が凝らされている。同校では、数学の学習を2年生からスタートしている。1年生で国語と数学を同時に始めることに無理がある。たくさんの本を読み、国語力をつけた上で数学に入る方が良いという考えからだ。通常6年間で学ぶ内容を5年で学ぶことになるが、2年生になるまでに、日常生活の中で数学についての諸知識が増え、数概念も広がっているので、無理のない指導ができる。1年間待つことで、学習意欲が高まっている面もある。また、早い時期から分数と小数を関連させて指導するなど学習の効率化が図られている。しかし、2年始期に固執しているわけではない。最近は、数学的な考え方を育てるために問題解決的な学習方法をとることが多く、時間がかかることもあり、今後の改革プランでは、1年生から週2時間数学を取り入れることも検討しているという。

― 先生自らも作詞作曲。歌い継がれる名曲揃い! ―

3年生から始まる「劇」では、創造する喜びともに、人間関係を豊かにする中でコミュニケーション能力を高めていく。年1回クラスごとに上演する「劇の会」に向け、全くゼロの状態から脚本を選び、配役を決め、保護者の協力を得て衣装などを用意し、上演に向けて練習して創り上げる。教師が自ら脚本を書いたり、歌を作ったりすることも多いという。3年に1度は対外的な劇の発表会もあり、出演児童が100名を越す規模のミュージカルなどが上演される。

また、「音楽」「美術」「映像」「舞踊」など、創造的表現活動も多彩だ。豊かな感性を育み、様々な表現方法で子どもたちの創造力を養っていく教科である。

  • 写真:劇の会
  • 写真:「遊び」の授業
  • 写真:校長室にいた「どろだんごくん」
写真:どろだんごできたよ!
― 一見意味のない、無駄に思えるような時間が子どもにとっては大切 ―

「遊び」の授業は、遊ぶことで経験を豊富にしていく時間。自然の中で遊んだり、伝承遊びをしたりと、みんなで遊ぶ楽しさを経験する。また、幼稚園のような小さな集団から小学校の1学年100名規模の大きな集団への過渡期に、集団生活に馴染んでいくことも目的としている。教室の中での授業とは違う自由遊びの中で、子ども本来の姿が見えてくることが多いという。「遊び」の授業の際は、先生方は常に子どもが誰とどこで遊んでいるかを記録している。そうしたことから、孤立しがちな子どもが、少しでも早く集団になじめるように手立てを講ずることができるという利点がある。 「遊び」の授業のみならず、成城の子どもたちは本当によく遊ぶ。低学年では特に、どろだんごつくりに熱中する子どもも多く、「どろだんごくん」が学校のキャラクターになっているほどだ。「一見意味のない、無駄に思えるような時間が子どもにとっては大切。そういう経験が人間形成の基礎になると考えています」と校長。子どもたちが自然や遊びの中で経験することの大切さを優しい表情で話された。

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子どもたちの発見を大切に「ぶらぶら散歩」

写真:成城学園初等学校

自然に親しみ、豊かな経験の中で人間性も深める

「散歩」も独自の教科。この日は1年生の「散歩」に同行させていただいた。 川沿いの道を歩き、祖師谷公園に向かう(基本的にクラス担任ともう1名の2名が引率)。担任の茂木先生は散歩の授業について「子どもたちの経験を豊かにする授業。目的を持たない『ぶらぶら散歩』をしながら、子どもたちが自ら感じ取ることが大切」と話す。歩きながら、子どもたちは様々なものに興味を持つ。ツツジの花、川を泳ぐ鯉、木の実、道ばたの草や小さな虫。そんな興味や発見を、先生やまわりの子に伝える声が聞こえてくる。 のんびりと20分ほど歩き、公園に着くと、先生が「しあわせの四つ葉のクローバーをさがそう!」と声をかける。「虫をとってもいいよ。持って帰りたい人はこのビニールに入れてあげる」とも。みんな思い思いにクローバーを探しはじめる。子どもたちはクローバーだけでなく、虫やタンポポ、ペンペン草など、いろいろなものに興味を持つ。走り回っている子どももいる。先生が草相撲のやり方を教える姿も見受けられた。

  • 写真:散歩の授業
  • 写真:散歩の授業
  • 写真:散歩の授業

帰り道では、先生が、空き地のタケノコや民家の庭にビワの実を見つけ、子どもたちを集めて教えてあげたりしていた。「散歩は、子どもたちのエネルギーを発散させる場でもあるんです」と茂木先生。生き生きとした子どもたちの表情が印象的だった「散歩」の時間、子どもたちが茂木先生を「モギちゃん」と呼び、気軽に話しかけていることに気づく。 同校では、先生をニックネームで呼ぶのが通常になっているという。先生と子どもの間に壁がない、とても自然な温かい雰囲気だ。先生に対する信頼関係ができている証拠だ。担任にクラス名がついているのも特色だ。親しみやすい木や花の名前がクラス名になっている。ちなみに茂木先生のクラスは「桜組」。クラス名を聞けば、誰のクラスかわかるので、卒業生と在校生との間で話が弾むことも多いという。

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子どもの個性を伸ばす三位一体の教育

一人一人が主役になれる学びの場で、学校の楽しさを存分に!

写真:校長先生

年間5回ある「クラスデー」では、日常の授業の中ではできない総合的な活動に取り組む。クラス担任と子どもたち、場合によっては保護者を交えて、その内容を決めていくという。飯盒炊さんや地引き網、スポーツ大会、母親が先生になってのお菓子作り、父親たちが手作りした装置での流しそうめんなど、実に様々な活動がなされる。こうした活動をはじめ、運動会、文化祭、劇での衣装づくりなど、保護者が学校に関わる機会は非常に多いという。

― 全教職員、全保護者みんなで子どもたちを見守り育てる ―

両親と学校だけで子どもを育てるのではなく、全教職員、全保護者みんなで子どもたちを見守り育てるという姿勢。「本校では子ども、保護者、教師が家族のような本当の触れ合いの中で6年間を過ごします。この三位一体の教育は子どもを育てていく上でとても大切です」と校長は話される。授業はいつでも見学できるので、保護者は授業や我が子の様子を自分の目で確かめ、その都度、先生に相談できる。「教師と保護者の関係が密で、情報を共有できるで、子どもの持って生まれた天分を見つけ、可能性を伸ばしていく上でもメリットがあります」と校長。同校が目指す個性尊重の教育の面でも大いにプラスになっているようだ。 多彩な教育活動の中では、子どもたちそれぞれが得意なものを見つけることができ、一人一人が主役になれる場面がある。「みんな違ってそれでいい」と、互いに認め合う同校の教育環境の素晴らしさを感じる。

  • 写真:お姉さんと一緒
  • 写真:先生と一緒に
  • 写真:スキー学校のコーチと一緒に

成城学園は、幼稚園から大学が同じ敷地内にあることも大きな利点であり、様々な形で異年齢間の交流を深めている。小学生が得意な和太鼓を幼稚園児に教えたり、中学校生活にスムーズに入っていけるように、中学生が6年生に中学の様子を説明しに来たりする。また、卒業生が大学生になると、初等学校のスキー学校のコーチとして参加することができるが、これには約60名の募集に対し、大学生からの申込みが殺到するという。卒業生が初等学校での思い出や先生方との絆を大切に思っていることが伝わってくるエピソードだ。

― 夏休みの終わりが待ち遠しい!? 成城っ子は学校が大好き! ―

「成城っ子は学校が大好きです。夏休みに入ってたくさん暑中見舞いが届きますが、ものの1週間も経っていないのに早く学校が始まって友達に会いたいと書く子が多いんです。自分が小学生の時にはもう少し夏休みが続いてくれたらと思うことはあってもそんなことを思ったことはありません。それだけ学校が楽しいんですね」と校長。その言葉通り、成城の子どもたちは、笑顔いっぱい。学校生活を思い切り楽しんでいるのが伝わってくる。もしも、もう一度子どもに戻れるなら、ぜひ通ってみたい学校だ。

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成城学園初等学校 学校・入試説明会スケジュール

写真:成城学園初等学校 イメージ
学校・入試説明会
日時 第1回 2012年6月10日(日) 10:00~(約2時間)
第2回 2012年7月 8日(日) 10:00~(約2時間)
場所 成城学園初等学校 講堂(9:30開場)
内容 平成24年度入試結果について
  • 成城学園初等学校の教育について
  • 入学試験までのスケジュール
  • 2013年度の入学試験について
その他 説明会当日に児童募集要項・入学願書を配布。
第1回と第2回は、同内容。
学校・授業見学
対象者 平成25年度の新1年生
期間 4月23日(月)~9月28日(金)まで
日常の授業を見学可能。
予約 要電話予約
申込 事前に授業日を確認の上、申し込み。
その他 休日・休校日の施設見学は不可。
『音楽の会』や『劇の会』等の学校行事の中には、当日の見学が不可の場合あり。
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