立教新座中学校・高等学校は、キリスト教精神に基づく人間教育を重視しながら、のびのびとした自由な校風の中、文武両道を実現している。
今回は、立教新座中学校・高等学校の渡辺憲司校長に、教育方針や目指す生徒像などを中心に、幅広くなお話をうかがった。緑豊かな広々としたキャンパス、恵まれた教育環境の中、広い視野と温かい眼差しのもとに育まれていく生徒たちの姿を思い描くことができ、同校の魅力が十分に伝わってくるインタビューとなった。
立教新座中学校・高等学校の教育方針をお聞かせください。
一人ひとりを大事にすることを何よりも大事にしたいと思っています。聖書の中に迷える羊の話がありますが、たとえば、群れからはずれた羊がいるときに、その羊を追っていくと集団が遅れるということがありますね。けれども、キリスト教精神では、その離れた羊を大事にして、迷える羊のことを考えることが全体を考えることだといいます。
これは、キリスト教精神の中でも、特に大事な精神だと思います。本校では、一部の生徒を大事にするということではなく、縁あって本校に来た生徒一人ひとりを大事にする。そのことが何より大事なことだと思っています。一人ひとりの生徒を大切にする学校の姿勢は、生徒自身が互いに個性を大切にするという姿勢にもつながるはずです。
そういうところで育った子どもが、世界の中で最も良いエリート的存在、世界のリーダーになり得ると考えます。突出した才能や知識だけで走るのではなくて、全体の幸福を考えられる人間がエリートであり、リーダーです。そういう意味でのリーダーを育てることが本校にとって大事な事業だと思っています。
これから求められるリーダー像を考える時、今の社会情勢の中では、勇気のある撤退といった問題が大きな話題になってくると思いますが、そうした場面において最後尾を務められるようなリーダーが必要となってくる。たとえば、船が沈没するといった時にでも、最後まで残って全員の幸福を考えられるようなリーダー、いわば、ヒューマンエリートを育てていくことが、本校として大事にしていることです。
ヒューマンエリートを育てる上で、具体的に取り組まれていることは、どのようなことでしょうか?
教科的に言えば、本校では、文系、理系の区別をあまりしていないんです。理系の中にも哲学、文系的な考え方が必要でしょうし、文系でも理系への理解が必要です。
今まで、他の学校、進学校では文系、理系を分けてきていると思いますが、たとえば、経済をやる場合においても非常に数学は重要ですし、理科でも技術的なことだけでなくて、そこに流れている思想みたいなものを大事にしなければならない。生き方に哲学のある子どもを育てたいと思います。
人権教育も、伝統的に重点を置いています。また、校外研修などでも、環境・平和といったことを、教育目標の中核に置いています。
現在の原発の問題などを考えてみても、技術的な進歩ということだけでは問題は解決しない。我々は、偏った教育を反省しなければならない時期に来ているのではないかと思っていますし、本校は具体的に、そういうことに取り組んでいるだろうと思います。
もちろん、広く学ぶことだけではなく、一人ひとりを大事にするという意味で、個性を育てることも重要だと考えています。本校では、85%位の生徒が立教大学に進学するのですが、それ以外の異なった進路を目指したいという生徒も育てる。立教大学にない工学部、医学部などを目指す生徒も、十分にケアできる体制をとることが大事だと考えています。
立教大学との連携は、太いパイプがありますから、それはもちろん大事ですが、それぞれの個性を育て、可能性を広げていくことも大切だと思っています。
校舎や設備の新築が予定されているとうかがいましたが?
高校の本校舎が建築されてから50年が経ちました。礼拝堂と同様に、近代遺産の設計者として有名なアントニン・レーモンドの設計の素晴らしい建築ですので、非常に残念なのですが、50年経ちますと内部的な疲弊が激しく、安全対策という面からも、これを機に本校舎と体育館を新築することにしました。2014年4月竣工の予定です。
また、グラウンドを人工芝化し、屋内競技用プール(50m,10コース)の新築も検討中です。体育施設という面でも、より充実した環境になります。
都心にはない広大なキャンパスは、本校の十分誇れるところですね。その中で、生徒たちはのびのびと活動しています。今年は、フェンシングの世界ジュニア選手権の日本代表選手として選ばれた生徒もいます。そのことはもちろん素晴らしいですが、私は、多くの生徒がクラブ活動に積極的に参加し、活躍しているということが重要だと考えています。甲子園に出場するとか、全国大会出場とかではなくても、それぞれがクラブ活動に打ち込んでいる。本当に多くの生徒が、高校3年までクラブ活動を一生懸命やっています。もちろん、スポーツだけでなく、音楽、たとえばジャズ研究会なども素晴らしい活動をしていますし、美術関係などもありますが、そのような活動の中での経験が、社会人になってからも役に立ってくると思います。そういう見方をしていくと、本校は文武両道という点では、全国でもかなりトップレベルにあるんじゃないかと自負しています。
どのような生徒さんを育てていきたいとお考えでしょうか?
男子のヒューマンエリート、本当の紳士、ジェントルマンを育てたいと思いますね。ジェントルマンの第1条件は、優しいことです。相手に対して気配りができるかどうかということですね。
学問をやっていても、歴史を学べば、歴史で出てきた人物にどのくらい気配りできるのか、どういう気配りの中で論文を書くのか。政治をやるにしても、経済をやるにしても、相手に対する優しさ、相手がどう考えるかということを考えないで学問は成立しないですね。
もちろん、お互いのヒューマンリレーションの上でも大事ですが、学問をやるということは、究極、相手をどう理解するかということなんだと思います。科学の分野でも同じです。科学の進歩に自分が貢献するとして、それが人間にとって、相手にとってどうであるのかを考えられる、究極の優しさがそこになければ、科学の進歩はあり得ないのではないでしょうか。単にお金があるとか、技術があるとかではなくて、そういうことを考えられる人間が、世界中をリードしていかなければならない。何のためにリッチになりたいのか、何のために経済的な豊かさを得るのか。究極は相手に対する優しさにつながっていくものでなければ、本当の豊かさはあり得ないでしょう。今まで、社会自体が、そういうことを考えないできたのではないでしょうか。経済学は何のためにやるのか、物理学は何のためにやるのか、常に考える姿勢を持つことは、中高生への教育の中で一番やっていかなければならないし、根本的に考えなければならないことだと思います。 現状では大学に入ると就職がすぐ間近にあって、決してそうであってはいけないとは思いますが、大学での人間教育がなかなか難しくなってきていますので、中高生への教育の重要性をより強く感じています。中高時代には、将来何をやるかということは、もちろん考えなければならないし、成績も大事ですが、そればかりが目的ではなく、単なる知識というより教養というか、人間の滋養になるようなものをためこむ時期として、大切にしていくべきだと考えています。
また、2013年度入試の日程について、山内辰治教頭にお話を伺った。
2013年度入試より日程が変更になるということですが?
はい。2013年度入試から、中学校・高校共に一部日程を変更することにしました。
日程については下記のとおりになります。
変更点としては、中学校一般入試第2回の試験日を従来の2月4日から2月3日に変更し、合格発表も2月3日の夜に本校のホームページ上で行うことにしました。
また、高校一般入試では、試験日を従来の2月2日から2月1日に変更し、合格発表を2月2日に行うことにしました。
多くの受験生が本校入学を希望してくれることを期待しています。
中学校入試日程 | 高校入試日程 | ||||
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一般入試第1回 | 帰国児童入試 | 一般入試第2回 | 推薦入試 | 一般入試 | |
募集定員 | 男子約100名 | 男子若干名 | 男子約40名 | 男子約20名 | 男子約60名 |
入学試験 | 1月25日(金) | 1月25日(金) | 2月3日(日) | 1月22日(火) | 2月1日(金) |
合格発表 | 1月26日(土) | 1月26日(土) | 2月3日(日)H P 2月4日(月)掲示 |
1月23日(水) | 2月2日(土) |
※中学校一般入試第2回の合格発表は、2月3日の夜に本校ホームページにて行います。