元々、関西(特に阪神地区)は大正の末期頃から、中学受験熱(当時は旧制中学)が高い地域である。単に受験を意識した教育ではなく、子供から大人へきちんと育てる学校に子弟を入れたいという考えが関西には多く、中学校への進学熱は昔から高い。
公立のナンバースクールを核に、それを取り巻く私学の中学校が次々設立された。そんな中、受験生の選択肢が一つでも増えればという思いから灘中学も創設されたのである。関東に比べれば人口的には少ない小さなグループだが、関東に勝るとも劣らない受験ブームが関西にある。
和田先生が私学に通う一番のメリットだと考えているのが、教員団が入れ替わらないことである。結果、職場意識も高くなり、自分のいる職場を良くしようという意識が強くなる。生徒たちも同じ教員団の中で6年間過ごすことで、人間的なふれあいとしての母校愛が生まれてくる。
特に6年一貫校は一番多感な時期を共に過ごすため、生徒同士の「絆」、生徒と先生の「絆」が強く結びつく。それが結果的に学習、人間形成に繋がると考えている。逆に公立では配置転換も多く、校長先生も2年足らずで異動なのでどうしても薄くなる印象がある。
柔道の祖である嘉納治五郎の顧問で当校は始まっている。柔道の精神である『精力善用』『自他共栄』が校是としてずっと受け継がれてきており、人間形成を第一としている。
絆を強くするために当校では中学1年生~高校3年生までずっと同じ教員団が学年を持って上がる体制「6年間完全一貫教育」を取っている。
学習面では中学校でどんなことを学んできたかを弁えながら高校3年生まで指導していける。また、土曜授業は行わず、週32時間で授業を行っている。苦手科目克服のための補習などもあり、これはシステマティックなものではなく、各先生方が必要だと感じたら起こるものであり、こういった細やかな対応からも各学年への意識の高さが伺える。
生活面では生徒一人ひとりの変化に気付きやすい。中学1,2年生で真面目にやっていても多感な時期だからこそ勉強に手がつかなくなることもある。こうした変化にも気付きやすく、親身にサポートすることが出来る。しかも1対1ではなくチームで見守っているため、一人の先生が気付かなくてもほかの先生が気付くなどといった形になっている。
各学年に特色があるが、進学実績に大きな差は出ず、学年毎のレベルがあまり変わらないのは先生方の熱意の賜物と言える。
灘中学・高等学校では授業はしっかり行うが、クラブ活動の時間や趣味の追求の時間などもしっかりとある。そういった中で自分なりの勉強方法を見つけられる生徒には割合向いていると思うが、勉強方法から何から道筋を立ててもらわないとやらない生徒には向いてないかもしれない。
受験校を選ぶ際に偏差値輪切りで難しければ次の学校といった形で選ぶと合わない学校に入ってしまうこともあるため、それは避けた方がいい。近年は関西一円、近畿一円では統一入試に近い形を模索するあまりに入試日程が混んでいるため2,3日のうちで複数校の受験となっている。志望校に受かれば一番だが、偏差値だけで選んでしまった第二志望に入学ということが起こってしまっている気がする。
本来は私学にはそれぞれの特徴があって、入試説明会や学校見学会などといった場でアピールしているはずなので、どういう学校なのか、お子さんに合った雰囲気なのかをそれぞれしっかり見極めてほしい。そのためには学校に足を運ぶのが一番である。
大学に入ることがゴールではなく、次の学問、社会に出て活躍することがゴールであり、そのために成長する場が私学である。