2011年11月5日(土)、郁文館夢学園、高等学校・グローバル高等学校の学校説明会が行われた。説明会では学校長の挨拶の後、郁文館夢学園理事長である渡邉美樹氏から、同校の教育の根幹である「夢教育」の内容やその意義について話され、生徒の活動の様子がVTRで紹介された。また、高校3年の生徒から学校生活や海外研修で得たもの、将来の進路について話があり、「夢教育」を中心とした特色ある教育の中で成長する生徒たちの様子を思い描くことができた。
「夢教育」に賭ける郁文館夢学園の熱い思いに触れ、教育の場で実践される内容を知ることができたので、ここで紹介させていただきたい。興味を持たれた方は、ぜひ今後の説明会等に参加し、さらに理解を深めていただければと思う。
これから就職しようとする学生の中で、社会に出て行くことにワクワクし、好きな仕事につけると心浮き立っている人はどのくらいいるだろうか? それは約1%、100人に1人だという。郁文館夢学園理事長、渡邉美樹氏が、就職活動支援のセミナー等で講演したり、企業のトップとして学生に向き合ってきた中での実感だ。
嫌々社会に出て、毎日働くことが幸せであるはずはない。その結果、新卒の約30%が3年で会社を辞める。その時になって初めて、自分の人生は何なのかと考え、やっと落ち着くのが30才というのが現実だ。そうならないように、中学高校時代に、自分はどういう生き方をしたいか、社会の中で何をしたいかを考えることが必要だと、渡邉氏は強調する。
好きなことを見つけ、ワクワクして社会に出て行く若者を1人でも多く育てるのが学校の目的だ。子どもに幸せな人生を歩んでほしいという思いから、郁文館の「夢教育」は始まっている。
郁文館夢学園の目的は「子どもたちに夢を持たせ、夢を追わせ、夢を叶えさせる」。この目的を現実のものとするために「夢教育」という独自の教育プログラムを開発し、進化させてきている。
夢を追いかけるにはモデルが必要という考えから、生徒が夢のモデルを見つけることができるよう、様々なジャンルでナンバー1の人、子どもたちに会わせたい人を招き、話を聞く機会を設けている。様々なジャンルのスペシャリスト(夢達人)に触れることで、生徒一人ひとりの可能性を広げていく。
24歳でワタミを創業して以来、学校理事長、病院理事長、カンボジアでの孤児院経営など、次々に夢を叶えてきた渡邉氏自らが講師となって、体験をもとに夢を叶えるために大切なことを話す。生徒に様々な気づきやきっかけを与える場となっている。
すべてを生徒の手に委ね、作り上げる文化祭。日頃の活動の成果を発揮する様々なイベントが開催される。
正しい生活習慣を身につけ、優れた人格形成をすることを目的に、10泊11日の夢合宿(中1は5泊6日)が毎年、学年毎に行われる。
自らの夢を明確にし、その実現のための計画を立て毎日の行動に落とし込んでいく。いわば、夢のスケジュール帳のようなもの。
各クラスの担任が、生徒一人ひとりの夢としっかり向き合い、カウンセリングする。夢を明確にし、そのための学習ができているか等を確認し、進路指導にもつなげていく。
中学卒業までに、自分の将来像を描くことができることが目標となっている。自分の夢について日付を入れて具体的にそのプロセスを確認し、論文(原稿用紙50枚)を書き、郁秋祭で発表する。(高校から入学する生徒は、高校1年くらいまでには同じレベルに夢を具体的に描き、高2、3年では中学から同校で学んでいる生徒と同じスタンスで学んでいってほしい。)
起業体験、グローバル教育(アジア圏研修、英語力向上のための豊富な講座、国際交流)、ニュージーランドに1年間の留学(グローバル高等学校のみ)など。
渡邉氏は公益財団法人School Aid Japan(SAJ)の理事を務め、カンボジアで孤児院の建設・運営、学校建設や学校給食の提供などの活動に取り組んでいる。郁文館では3年前から、そのカンボジアで研修(希望者)が行われている。今回の説明会では、その様子がVTRで紹介された。
アジアの最貧国カンボジア、その現実を肌で感じ日本を見つめ直す研修だ。カンボジアに到着して間もない生徒たち、初めは観光気分で笑顔が見え、表情にも余裕がある。
その後、生徒たちは、ゴミの荒野に生活の糧を得ている幼い子どもたちの姿を目の当たりにする。10才の少年が屑鉄を集め、1日50円を得る。貧しさが肌を通して伝わってきて、観光気分ではいられなくなっていた。今の貧困を生んだ内戦の歴史が残る博物館を見学し、無実の国民200万人もが拷問され、殺害された過去を知る。殺害される直前の人々の写真が展示されている。その中には幼い子どももいる。子どもたちの怒りとも悲しみともつかない表情。生徒たちの表情は一変していた。その狂気が胸に突き刺さり、身体中で締め付けられるような悲しみを感じていたのだろう。
翌日、生徒たちは孤児院を訪問し、相談して彼らの昼食を作る。ガスも電気もない、日本とは全く違う状況の中で2時間かけて豚汁を作った。食事をする子どもたちの笑顔に、生徒たちは引き込まれる。親を亡くし過酷な環境で生きぬいてきた子どもたちは、ご飯があって、家がある、たったそれだけの当たり前の生活をここでやっと手にすることができた。その喜びと感謝の気持ちを持って過ごす子どもたちには笑顔がある。他人の悲しみを胸に焼き付け、喜びを肌で感じた生徒たち。VTRから伝わってくる彼らの表情の変化と言葉のひとつひとつから、日本で当たり前に、普通に生活ができている自分たちの「責任」への自覚が見えてくる。
「責任」ということは、夢教育において大変重要なキーワードだと渡邉理事長は言う。社会の中の自分、世界の中での自分の責任に気づいたとき、自分に何ができるかを考え、それが夢につながっていく。「君たちは、将来どんな夢をもっていますか?」とカンボジアの子どもたちに尋ねると、すごい勢いで手が上がるが、日本やアメリカ、ヨーロッパでは手が上がらないという。貧しさゆえに、ハングリー精神を持ち、強く責任を感じざるを得ない国々と豊かな国との違いだ。夢など持たなくても生きていける豊かな日本。その中でも自分自身の責任に気づき、夢を育んでいってほしいと、同校では、そうした気づきの機会を持つことを大切に考え、生徒たちの確かな情報を提供し、リアルな経験ができるプログラムを組んでいる。
この夏、岩手県陸前高田市での0泊3日という厳しいスケジュールのボランティアに、生徒約400人が参加した。大震災の被害を目の当たりにし、テレビや報道で知る以上に悲惨な現実に衝撃を受けた。被災した人たちのために、自分たちができることは何かと強く意識し、「責任」を自覚する経験となったことだろう。
説明会の最後に、郁文館グローバル高等学校3年の後藤君が、郁文館での経験や自分の夢について話してくれた。ニュージーランド留学、カンボジア研修で彼が感じたことが率直に述べられ、彼の成長の過程や夢を抱き、その実現のために努力していこうという意気込みが伝わってくる内容だったので、ここで紹介させていただきたい。
コミュニケーションスキルを磨き、自分の意見を主張できる実践的な英語力と行動力を養った。言語も文化も違う国でひとりになり、様々なことを考えることができた。
学校では、世界中から集まった留学生のクラスリーダーとして、自分と異なった意見や主張、価値観の人たちをまとめ、正しい方向に導いていくことを考え、クラスをひとつにまとめていくという経験をした。また、留学先のクライストチャーチで地震を経験し、ホストファミリーと助け合って、自分のできること、すべきことを行ってきた。
留学中、一番感じたことは日本で当たり前なことが当たり前でないということ。留学は誰もができる経験ではない。先生方、家族のために恩返しをしたいと思い、立派な国際人になり胸を張って帰国したいと思った。
報道等でカンボジアは貧困にあえいでいるという事実は知っていたが、実際に訪れるとあまりの悲惨さに言葉を失った。子どもたちは貧困に直面しているが、明るく、笑顔で迎えてくれた。彼らは自分たちが置かれた環境を言い訳にせず、今あるすべてのものに感謝し、過去ではなく確実に未来を見つめている。5、6才の子どもでもリーダーシップを発揮し、自ら考え行動していることに感心した。
東日本大震災が起こり、自分のクラスからは15人の仲間がボランティア活動のために東北を訪れた。その経験から、自分たちにできることは何かと考え、先日の郁秋祭で、ジントニックという株式会社を立ち上げ、社員の配当金すべてを義援金として東北に送るというアクションを起こすことができた。どんな環境においても、自分にできること、すべきことを考え行動することが大切だと感じる。
高校での経験から、日本を愛する心とリーダーシップをあらためて考えた。
夢は国際社会で活躍できるリーダーを育成し、日本を世界に誇れる国にすること。その実現のために最適な環境である国際基督教大学(ICU)を志望し、AO入試で合格することができた。いつも私達と本気で向き合ってくださる先生方のおかげだと思う。いつも本気で褒めてくださり、本気で叱ってくださる先生方と最高の仲間がいたからこその合格だと感じている。
今後も、夢実現のためには遠い道のりが待っていると思うが、目標達成のため日々努力していきたい。
ビジネス界、海外、教育現場と様々な分野で活躍する渡邊美樹理事長の話は圧倒的に聞く者を惹きつける。夢達人ライブで幅広い分野の著名人の話を聞き、夢を夢で終わらせず実現することの大切さをリアルに感じることができる学校だ。最近は入学偏差値から大学進学実績が東京都内で最も伸びが大きいと紹介している記事もある。まだ渡邊理事長の話を聞くチャンスはある。今後の説明会をホームページでご確認いただきたい。