やさしく賢い女性に! 知と心のバランスのとれた教育

学校全体で、生徒ひとりひとりを見守り、育てていく

東京純心女子中学校・高等学校の教育のひとつの柱は、キリストの教えに基づいた心の教育である。
同校が目指すのは「やさしく、かしこい久遠の女性、聖母マリアを理想と仰ぎ、純粋なやさしい心と高い知性を兼ね備えた献身的な女性」創立者の言葉で借りれば「神様にも人様にも喜ばれる女性」の育成。すなわち、自分がかけがえのない存在だという肯定感を持ち、社会に貢献できる自立した女性を育てることだという。

東京純心女子中学校・高等学校 マリア像

「心の教育は、宗教の時間や朝礼の中で学ぶだけでできるのものではなく、日々の積み重ねが大切なんです」と内海道子先生は語る。
特に中学生には、ことばづかい、あいさつといった基本的なところから、時には生徒にうるさがられながらも、細かく指導しているという。そうした中で、自分が発した言葉が他人に与える影響を理解することが、人に対する思いやりにつながると考える。

「私達は生徒の中に、種をまいているようなもの。中高6年間という大切な時期に蒔かれた種が、大人になってどのような花が咲かせるのか、楽しみにしています」と内海先生。

同校では、学年単位で教員がチームとなり、生徒を見守る体制をとっている。
たとえば、朝、登校していない生徒については必ず保護者に確認をとるが、担任が授業などで時間が取れない時は、チーム間の他の教員が即時に対応し連絡を取る。そうした生徒の出欠の確認といった生活面での安全に関わるところから、教科の枠を超えての学力面での把握まで、学年間で教員が情報を共有しながら、一人ひとりの生徒を見守り、育てていく体制がとられている。

東京純心女子中学校・高等学校

選択科目の幅を広げ、現行入試に対応できるカリキュラム

細やかな指導で基礎力養成! 学習意欲と集中力をキーワードに

同校では今年度より高校募集を中止、完全中高一貫化し、新カリキュラムに移行した。新カリキュラムのコンセプトは、生徒の夢や希望を実現できる学力をつけさせること。現行の大学入試にきめ細かく対応し、入試を突破する学力の育成を目指す。

カリキュラムの特徴のひとつは、高校での選択科目の幅が広がることだ。文系、理系、その中間的な分野(看護系、栄養系)といった選択により大学受験に必要な科目は様々。自分の志望校や志望学部に応じた科目を選択できるようにし、学校の授業だけで充分入試科目に対応できるように工夫がなされている。

英語と国語に関しては、必須でセンター試験対策があるほか、他の科目についてもセンター対策の授業を選択できるようになっている。根底にあるのは、学校で責任を持って受験指導をすべきだという考え方で、生徒の進路選択や将来の可能性を広げるカリキュラムとなっている。

東京純心女子中学校・高等学校イメージ

学力をつける上でのキーワードは学習意欲と集中力だという。
まず、自学自習、家庭学習の習慣づけが必要と考え、中学1年生からしっかり指導している。具体的には、小テストを頻繁に行うことで、それに合わせて生徒が家で学習する習慣を身につけ、計画的な学習習慣で、実力をつけていけるよう配慮されている。
小テストによって、生徒がきちんと家庭学習できているかどうか把握でき、勉強不足の生徒には、定期テストの前に補習を行うなどフォローできるのも良い点だ。

同校では、テストで常に8割の得点が取れるように指導している。生徒の多くが進学を希望する有名私立大学は、センター試験でほぼ8割以上の得点が合格ラインだ。センター試験は、教科書にある基本事項を問うものなので、日頃、授業でやっていることが身についていることが大切で、学校の試験で8割の得点ができることが、志望大学合格への近道になると考える。

東京純心女子中学校・高等学校校舎

先生方は、この4、5年の間で、生徒の集中力の低下、とくに話を聞く力に不安を感じることが多くなったという。
1対1では聞くが、一斉授業で集中できていない生徒が多い。勉強以前に集中力を身につけてほしいということから、中学生を中心に多くの学年でホームルームノートの作成を行っている。朝礼で教員が話したことを生徒達が書き留め、担任に提出し、担任はコメントなどを書いて返却する。

それは、生徒とのコミュニケーションにも一役買い、生徒がどの程度集中して話を聞くことができているかもわかる。他の教科におけるノートの取り方にも良い影響を及ぼしているという。また、どの教科においてもノートチェックを行い、教科担当者は生徒の集中力や授業への取り組みを随時チェックし、把握している。

基礎学力の早期定着という面からは、中学1年生では、英語は週6時間+英会話、数学は週6時間の授業数を確保し、両教科については、中学2年生から習熟度別クラスでの指導を行っている。国語では、中学3年生から「古典」を習熟度別授業として行い、強化を図っている。

さらに、生徒が自分の将来、職業について考え、適切に進路を決定するためのサポート体制も充実している。
進路に関する講演会や職業調べといったことから始まり、卒業生を招いての進路座談会を行ったり、高校1、2年生では、大学の講義を受ける機会を設けるなど、様々な角度から夢や適性を探り、将来を考えていく。高校1年生で実施される進路研修の合宿では、大学の入試制度を理解し、それに合わせて高校2年生からの適切な科目選択ができるようにする。

また、各教科の教員がパネラーになって、進路に関してパネルディスカッションが行われ、生徒の疑問に答えたり、教員自身が体験談を語る機会もある。その後は消灯時間まで、生徒が教員に自由に質問し、話をしたり、生徒同士が語り合う時間が持たれる。進路や勉強に関する悩みを互いに共有できることもメリットのひとつだ。日常の中では、友達と将来について話をする機会は意外に少ない。友達の夢や悩みを知ることは刺激にもなり、みんなでがんばろうという雰囲気を作ることができるという点でも、意義のある合宿になっているようだ。

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図書館との協働で、本物の力をつける

信頼できる情報を見極める力、レポートの書き方を身につける

同校では、生徒の学習意欲を向上させるという面からも、図書館と連携した調べ学習に力を入れている。
多くの学校が調べ学習を行う中で同校の特色は、各教科と図書館の協働によるコラボレーション教育と段階的に探求型学習を行い、問題解決力を身につけていくことができる仕組みにある。徐々に難易度を上げながら、ステップを踏んで指導することで、生徒が自らテーマを選び、問題解決力を身につけていけるように工夫がなされている。

たとえば、中学1年の社会科では、世界の国々を調べることがテーマであるが、調べる国はくじ引きで決められる。
生徒は、担当となった国について、教科担当者と図書館司書が作成した独自のワークシートに従って調べていく。参考文献も図書館で用意されるという。そうした初歩の段階から始まる調べ学習は、自分でテーマを決め、調査し、レポートをまとめ、意見を発表するというところにまで到り、中学3年生の社会科では、時事問題スピーチが行われている。

レポートの書き方という点でも、基本から丁寧に指導がなされ、大学に入ってからも通用するような形式、書き方を学んでいく。社会科に限らず多くの教科で、調べ学習への取り組みがなされ、それぞれの科目で、1~1ヶ月半という期間がそれに充てられているという。

東京純心女子中学校・高等学校 図書館東京純心女子中学校・高等学校 図書館東京純心女子中学校・高等学校 図書館

「自分で考え、自分で調べ、自分で発表する、本物の力をつけてほしい」と今尾美枝子先生は語る。
インターネットの普及により、簡単に情報を得られるようになったが、正しい情報とそうでないものを見極める力が求められる現状の中、信頼できる文献資料を使って調べ学習をすることには意味がある。
理解していない情報の丸写しは単なる作業であり、何も残らない。文献を用いて調べ、考えることが重要だと言える。インターネットと文献資料の両方を活用することが、今後の課題であるとも考えているという。

インタビュー後、図書館を見せていただいた。中学校の図書館には約25000冊、高校の図書館には約55000冊の本がある。その蔵書数もさることながら、図書館のいたるところに、生徒達が書物に親しみ、興味を広げていくための配慮がされているのを感じる。新聞や雑誌の記事の切り抜き、お勧めの本についての手書きのコメント、趣向を凝らしたクイズなどが貼られ、様々な方向から、生徒に語りかけている司書の姿が見えるようだ。同校の生徒の図書館の利用率が高いこともうなづける。生徒達にとって図書館は、いつも身近にある大切な空間であり、「知」の拠点として大きな役割を担っているに違いない。

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