時代に即した教育で、自立した女性を育成~伝統校ならではの、地元に密着した参加型体験学習も

日本橋女学館中学校・高等学校は、「質実穏健」の建学の精神のもと、地域に密着した形でスタートした、今年創立106年を迎える伝統校だ。そうした伝統を生かして、同校では、独自のキャリア教育として「にほんばし学」に取り組んでいる。
地域との連携を深めながら、問題解決能力、コミュニケーション力、チャレンジ精神を養っていく「参加型学習」だ。
また、同校の校歌の歌詞には「いざや時代にさきがけて 示せ女性の進む道」ということばがある。そのことば通り、時代の流れをとらえた適切な教育で、将来、社会に出て活躍できる女性の育成を目指してきた学校である。
そうした意味からも、同校では近年特に理科教育を重視し、研究活動にも力を入れてきている。

日本橋女学館中学校・高等学校イメージ

背景には、子ども達の理科離れが危惧される一方、長引く不況の中、比較的就職に有利な傾向がある理系の学部に人気が集まってきており、女子においても志望者が増加していることもあるだろう。
同校は、今年、SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)に認定され、サイエンス部を中心に様々な研究が進められている。

高度な研究に取り組み、知的探求心が深まる~大学の雰囲気に触れ、自分の未来を思い描く

SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)とは、生徒の科学技術、理科に対する興味・関心と知的探求心等を育成することを目的として、大学・科学館等との連携により、実験、実習等の体験的・問題解決的な学習活動に対して支援を行うというもの。同校は、このSPPに認定され、サイエンス部を中心に様々な研究が進められている。

サイエンス部では、現在3つの研究が行われている。1つめはアサクサノリの研究だ。
実は、現在出回っている海苔のほぼ100パーセントがアサクサノリではなく、スサビノリだという。私達は、アサクサノリを食べる機会は皆無に近いのだと、サイエンス部の生徒さん達が教えてくれた。
アサクサノリは、デリケートで育てにくい一方、スサビノリは大きく育てやすいという。

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彼女達の目標は、「アサクサノリを育てて、東京湾に戻そう!」というもの。
アサクサノリは稀少で、採取できる季節は冬だけということで、まだ道は遠そうではあるが、千葉県勝浦市の「海の博物館」の研究員で、アサクサノリ研究の第一人者である菊地則雄先生の講義を聴きに行く機会を持つなど、少しずつ研究を前進させている。

2つめは、イノカシラフラスコモの研究。
イノカシラフラスコモは、井の頭公園で発見されたことから、その名がついたという車軸藻(しゃじくも)という水草の一種で、絶滅危惧種とされている(現在は、千葉県市川市のジュンサイ育成池において、自生が確認されているのみ)。
胞子からの発芽に始まり胞子を再生産するまでの世代交代のしくみが解明されていないとのことで、絶滅回避のために、それを解明することが研究のテーマとなっている。

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そして、もう1つは、江戸東京野菜の研究だ。これは一昨年から、「にほんばし学」でも扱ってきたものだが、今年度もJA東京むさしの協力を得て、より本格的な研究として進めている。研究テーマは、「連作障害について」と「江戸東京野菜と普通の野菜の違い」だという。
連作障害については、今年から始まった研究ということで、来年にならないと具体的な研究ができない状態だが、観察や土壌の分析といったことに取り組み始めている。江戸東京野菜と普通の野菜の違いということでは、2つの野菜は、形状、味といった点で違いがあるのだという。
その観察を進めるとともに、いずれ遺伝子レベルでの違いを研究することを目標に準備を進めている。東洋大学との連携の中で、「DNA遺伝子解析について」「ALDH2遺伝子SNP型判定」といった内容の講演を聴き、知識を深めている。

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かなり難しそうなテーマに取り組んでいるサイエンス部だが、雰囲気はいたって明るく和やか。部活の合間や帰りに、友達と部活以外のいろいろな話をできるのが、とても楽しいと話してくれ、そうした中でお互いの絆を深めている面もあるようだ。

また、実際、大学の研究室に行き、研究生の方といっしょに研究する機会もある。
サイエンス部の生徒達はこの活動について、「他ではあまり経験できないこと。大学に行くのは初めてで、新鮮だった」「大学の研究生と一緒に研究するのは、刺激になるし、楽しい!」と話してくれた。

中学、高校生が、実際に大学に行くことは少ない、しかも、大学の研究室となるとなかなか経験できないことだ。将来の姿を思い描くという意味で、キャリア教育にもつながる。サイエンス部に入ったきっかけを「もともと理科と数学が大好きだったから」と話してくれたSさんは、「理系に進んで、脳科学などの研究をしてみたい」と言い、こうした活動の中で自分の将来のことをより具体的に描くことができるようになったようだ。また、Nさんは「文系だけれど、苦手な理系を伸ばしていきたい。研究にも興味がわいてきました」と言う。Tさんもやはり文系だというが、「サイエンス部に入ってから、理科の楽しさがわかり、前回のテストでは理系科目の方が良かった。理系に進むことも考えるようになりました」と話してくれた。

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それぞれがみんな、理科の楽しさを感じ、興味を深めてきたようだ。彼女達は高校1年生。まだ、文系、理系がはっきり分かれてはいない段階だ。もしかしたら、このサイエンス部での活動が、彼女達の進路に大きな影響を与えることもあるのかも知れない。

顧問の先生(生物担当)は理科教育全般について、「都心にある学校で、自然に触れる機会が少ないので、子ども達が外に出て、体験する機会を多くしたい」と言い、実験も多く行っているという。体験をきっかけに、理科に興味を持ち、好きと思えるようになってくれることが第一。そうなれば、生徒達は自然に勉強するようになるという。一方で、中学生の授業の中でも、センター試験の問題を解く機会を持つ(学習した範囲で解ける問題を抜粋)こともあるという。変化のある授業展開の中で、生徒の学習意欲を高め、着実に生徒の力を伸ばす工夫をされていることを感じた。

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女性が宇宙に行く時代、これからの日本の科学の発展を担っているのは女性だと思います。女子校で担任や授業をしているとき、ちょっとした生徒の一言に「えっ! そんなところ」、「そんなところが気になるの?」と思うことがあります。この『女性ならではの発想、考え方』は科学の実験に活かせると思います。今まで男性中心の科学の社会、そこに女性が入ることによって、男性では思いつかなかったことを女性の新たな発想で新しい発見が出来るのではないかと思います。これからの科学は女性がリードしていくと信じています。そんな女性科学者を育成すべく本校のサイエンス部があります。本校で将来の日本の科学を支える女性科学者を目指してみませんか。

少人数制、細やかな指導で、着実に志望校に近づく!~互いの絆を深め、生き生きと学校生活を楽しむ中で成長する

学校全般のことについて生徒達は、「先生が良い。わかりやすくおもしろい授業をしてくれて、勉強が楽しくなった」「先生がひとりひとりを見てくれて、質問しやすい」と先生と生徒の関係の良さを口々に話してくれた。同校は、1クラス20~30人程度という少人数制がとられている。生徒に目が行き届き、しっかりと指導できる環境だ。また、生徒の進路に応じて、中学では難関大学進学クラス、進学クラス、高校からは難関大学進学コース、進学コース、芸術進学コースにコース分けがされ、習熟度別の指導も行われている。ひとりひとりが学習内容をしっかり理解し、自分の目標に向けて勉強できる体制に加え、特に、高校1年生からのナイトスタディ(放課後~19:00までの大学受験に向けた実践的指導)やチューター制など、学力を高めるプログラムが整っている。こうした体制と細やかな指導は、着実に進学実績にも表れてきている。

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また、「同じフロアに中学生と高校生がいるところもあり、自然に仲良くなれる」「部活でも、中学生と高校生がいっしょに活動できる」と中高一貫校ならではの良さも話してくれた。学校行事が豊富なことも魅力だ。流し雛、針供養(同校では、針・文房具供養といった形で、使い古した文房具を供養する)、七夕集会など、日本古来からの流れを汲む独自性のある行事が行われるのも特徴といえる。女子校ならではの穏やかな情緒を感じるが、反面、体育祭も大いに盛り上がるという。そうした行事の中で、互いに絆を深めて、学校生活を大いに楽しんでいるようだ。

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生き生きと学校生活を楽しみながら、自分の将来を見据え、着実に進んでいく日本橋女学館の生徒達の姿を見ていると、女性が社会の中でさらに大きく飛躍する未来を、彼女達自身がつくっていくのだろうと、たのもしさを感じた。

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