徹底した個別指導で、中学受験の学力も養成~一人ひとりに合わせた対応で自ら学ぶ力をつける~

i n t e r - e d u’s e y e

生活習慣や学習の基礎を身につける上で、小学校6年間は、非常に大切な時期であることは間違いない。どちらのご家庭でも、小学校選びはお子さまの性格やご家庭の教育方針を考慮の上、慎重になされていることと思う。

今回紹介する「むさしの学園小学校」は1924年創立以来、個人重視の教育を貫いてきた学校だ。家庭的な温かい雰囲気の中、徹底した少人数制で特色のある教育を実践している。独自の授業スタイルで行われる「国語個別学習」を見学させていただくとともに、江幡清彦校長に、教育理念や実践されている教育内容についてインタビューさせていただいた。一見、中学受験とは無縁の穏やかな環境の中で、着実に個性を伸ばし、私立中学への進学実績を上げている同校の教育の秘密に迫る。

明るい校舎と心を豊かにする教育で、のびのびと育てる~自然に触れ、存分に遊び、豊かな情緒を育成する

今年度、完成した新校舎は、木の香りのする温もりを感じる空間だ。
陽光を取り込む窓が多方向に大きくとられ、明るく広々とした印象を受ける。新校舎について、江幡清彦校長は「子ども達が明るく楽しく過ごせるスペース、ホッとして本音を出せる場にしたかった」と語る。
そのために、設計の細部にわたるまで気を遣い、子ども達のための空間を広くとり、のびのびと遊べるように考えられている。

「子ども時代には子ども時代にしかできないことをしてほしい」と校長は言う。その思いは同校の教育の随所に現れている。
週1回の「野川の時間」は、お弁当を持って徒歩5分ほどの都立野川公園に行き、学年の枠にとらわれず、自然の中でこころゆくまで遊ぶという活動。自然に触れ、遊びを通して豊かなコミュニケーション力を身につけていく。

また、美術や音楽といった芸術面には特に力をいれており、情緒豊かな人間性の形成を重視する。
1、2年生では音やリズムの基礎を身につけ、身体で表現する「リトミック」の授業もあり、子どもの心を解放するためにも役立つという。

「聖書」の授業では、学年に応じてキリスト教に基づいた教育が行われ、歌や手話を使って楽しみながら、キリスト教の心を感じる。
高学年では、聖書の解説によって社会で問題になっていることを話題にし、ともに考える。
手話を学ぶ中で障害を持った人への理解を深めるための学習もなされる。キリスト教そのものというよりも、子ども達に「良い人間関係を築くためには、友だちを赦す心(愛)を持つことが大切」と伝えることが教育の目的となっている。

一人ひとりに自信を持たせ、粘り強く、努力できる子を育てる~コツコツ積み重ねて、基礎学力をつけ、自ら学ぶ姿勢を!

取材当日は、1、2年生の「国語個別学習」を見学させていただいた。

まず、1年生のクラス。15人のクラスを2人の先生(この授業ではクラス担任と校長先生)が担当する。
先生が子どもの隣に座り、子どもが教科書を読むのを聞く。

読み間違いがあったときは、先生が読み直し、それを聞きながら子どもがもう一度読む。間違いを強く指摘するようなことせず、子どもは自分のペースで読み進めていく。終わったページにはその都度、先生が○をつけ、キリの良いところ(約5分ほど)で、次回の授業での始まりがわかるように日付を記入して終わり、先生は次の子どもの隣へと席を移す。

進度はそれぞれの子どもで違い、読んでいるページは同じではない。
先生に指導を受けている子ども以外は、自由に絵を描いたり、折り紙をしたりしている。

教室の中は、入学して1ヶ月ほどしかたっていない1年生とは思えないほど静かだ。小学1年生が集中できる時間はせいぜい3~5分だという。

そうした子どもの実態をわかった上で、楽しみながら勉強していく工夫がなされていることに感心した。

2年生のクラスでは、1年生と同様の読みに加え、読んだ文を覚えてノートに書き取る「写し書き」をしている。
教科書の文章を書き写す子どももいれば、絵本の文章、物語の文章(「読書表」という図書リストの中から選択)を書き写している子もいる。
ここでも、進度や「国語個別学習」の時間に行うことは、子ども自身にまかされている。
先生が読みを見てまわっている間、折り紙を折っている子、絵を描いている子、ずっと物語の文章を書き写している子など様々だ。

同校では、1、2年生で週3時間、3年生で週2時間、この時間を設けている。
読み書きの基礎を身につけるとともに、自分でコツコツ学んでいく姿勢、自ら勉強する内容を決めていく主体性を伸ばすことに役立っている。書くことを厭わない子は必ず伸びるという。
「平々凡々としたことを繰り返すことができるほど、心が強くなる。同じことを飽きずに繰り返すことが、結局長い目で見れば底力を蓄えることになる。」と江幡校長は語る。

一人ひとりの違いを受け止め、指導していく教育理念が貫かれている。
できる子には、できるからといって手を抜かないことを理解させ、さらに力を伸ばす補助をし、できない子どもには自信をなくさないように、さりげなく補助する。個人に目が行き届いているからこその指導だ。
違うことをマイナスにとって卑下したり、逆に増長するのではなく、違って当たり前と子ども同士もお互いを認める環境があることが、「イジメのない学校」と言われる同校の根幹なのであろう。

「中学受験」は成長のチャンスとさせる指導法~教科指導より受験に臨む意識を重視

同校の卒業生の約9割は、私立中学(国立、公立中高一貫校も含む)へ進学するという。そこで、中学受験への取り組みについてもうかがった。

元々、同校では、公立中学に入った時、クラスのベスト10に入れるような学力をつけ、クラブ活動等に打ち込みながらでも、きちんと勉強についていけるようにという考えから、小学校学習過程にある内容を前倒しして教え、卒業までに丁寧に復習し、身につけられるようにカリキュラムを組んでいる。
このことは、中学を受験する子どもにとって有利なことであろう。

また、6年生では、算数で週4時間、受験対策の時間を設け、4人の教師で個々の質問に答えられる体制とっているほか、国語、社会、理科においても、適宜問題集などを用いて指導をしているという。

さらに言えば、1~3年の「国語個別学習」で繰り返し、書き写しを続けてきたことが国語力の基礎固めになり、進んで勉強に取り組む姿勢につながっている点も大きなメリットだ。
しかし、教科の対策よりも重視しているのが、意識の問題だ。大手進学塾の講師を招き、中学受験の意味を子ども達に理解させる機会を持ち、保護者に対しても同様の講演を行うという。

子ども達がどれだけ進んで取り組めるかが大切で、周りはいくら加熱しても仕方がない、応援するだけだということを理解した上で、親子が受験に臨めるよう働きかけている。
「子ども達が自ら進んで学習に取り組み、中学受験に向かえば、それは成長のチャンスになる」と校長は語る。

むさしの学園小学校では、見学を随時受けつけている。
個別授業など、特殊な授業もあるので、ぜひ実際に見ていただいて、学校の教育方法・を知った上で受験してほしいという。

「今できる子よりも、できるようになりたいという意欲が強い子。あきらめない子、コツコツできる子。そういったことを大切に考えている家庭のお子さまにぜひ入学していただきたい」と子どもに寄せる思いを語る江幡校長の眼差しは温かい。

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