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小学校英語では、なにを教えるべきか?


小学校英語では、なにを教えるべきか? 西武文理小学校のポームページはこちら

inter-edu's eye 今春からスタートした「小学校英語」

今年4月から新しい学習指導要領が一部先行実施された。
その教科の中に「英語(外国語)活動」が加わり、公立の小学校でも5・6年生で英語が週1コマ必修となった。

OECDの学力到達度調査など世界レベルでの学力が問われる今、保護者の中にはお子さまの小学校からの英語についてご心配される方も多いのではないだろうか。
小学校から外国語を学ぶのは早すぎない?…日本語の習得は大丈夫?…中学校から学ぶのとどう違うの?…など不安の声はつきないもの。

そこで今回は、「英語のシャワーで世界のトップエリートを育てる」を開校以来の合言葉に掲げる西武文理小学校を取材した。
この学校では、小学校低学年から週2時間、高学年では週3時間の英語の授業を行い、さらに音楽・図工・体育で英語イマージョン授業を実施し、合計すると週9時間以上の英語に触れる授業を実施している。

小学校から英語を学ぶことについてどのように考え、どんな授業が展開されているのだろうか。実際の授業に潜入してみた。

言葉は使ってこそ!圧倒的な挙手率でクラスの全員が発言する

まずは2年生で英語の授業が行われているというので、早速行ってみることに。

「English Room」は、机がなく椅子だけの教室だ。
教室をのぞくと先生の質問に対して全員の手があがっている

学校のあちこちには英語が!…

指を手のひらに1本のせた先生が聞く。

先生「what's this?」
子どもたち「this!」

次に指を4本手のひらにのせた先生が再び質問。

先生「what's this?」
子どもたち「these!」

なんと、複数形という英語文法のひとつの関門を小学2年生でスルリとすり抜けているのだ。

教務主任の古橋敏志先生は言う。

「英語教室に机が無いのは、書くことよりも、コミュニケーションを中心とした英語を体全体で吸収することを大切にしているからです」

言葉は使ってこそ。
子どもたちは全神経を先生の口から発せられる音や口の動きに集中させ、自分の口を通して言葉にしてみる。その繰り返しの成果か、文理小学校の子どもたちの英語の発音はとてもきれいだ。
また、黒板に掲げられる単語カードや英文にも集中し、スラスラと読むことができている。圧倒的な挙手の数は少しでも自分の言葉として英語を発したいという気持ちの表れのようでもあった。

ネイティブの先生と日本人の先生の2人体制で授業が展開され、それに子どもたちがテンポよく英語で答えていく。

英語+(音楽+図工+体育)で感性といっしょに自然と英語をマスター

さらに英語以外の授業でも英語が使われているというので、のぞいてみた。

音楽(1年生)

「Good Morning.How are you♪」と歌いながら、子どもたちは横の席の子と手をたたきあっている。
「I'm happy.」「I'm sad」と子どもたちは表情を作ってクラスメイトに自分の気持ちを伝えていく。

英語を使う国では日本よりも感情表現が豊かである。音楽の授業では歌だけではなく、感情を顔と言葉を使って表現することを学ぶという。

図工(2・3年生)

さらに図工では道具の貸し借りなど英語を使って「必要(I need)」と伝える。

ハサミ、カッターナイフなど様々な道具の英語名が飛び交う。ここでも、子どもたちの挙手は積極的。

体育

体育の授業もネイティブと日本人の先生が教えている。

そして体育では体を動かす具体的な指示が英語で出されている。
ネイティブの英語をしっかりと聞こうとする子どもたちの顔は真剣そのもの。

注目すべきは、ネイティブと日本人の2人の先生が英語でつくる授業展開の面白さだ。
創意工夫に富み、2人の先生によるチームワークのよい授業であっという間に45分が過ぎていく。

西武文理小の英語教育の秘密

西武文理小学校の子どもたちの挙手率の高さ。なぜこんなに子どもたちが積極的なのか。
それは前述でも触れた、教師同士の密接な連携プレーがあるからだ。

毎週火曜日の朝、授業の1コマをつかい、英語教育にかかわる英語、音楽、図工、体育、ネイティブの教員約20名でミーティングが行われている。
なんと、ミーティングはすべて英語!ネイティブの先生と日本人の先生が活発にかつ真剣に子どもたちのことを話し合う。

指導の仕方や学年ごとの問題点などを全体で共有し、それぞれの意見を出し合っている。この先生たちの熱心さとチームワークが子どもたちを授業に夢中にさせているのだ。

英語が必要な状況設定を授業の中で創りだす

西武文理小学校開校当初から英語を担当されている黒瀬勝利先生にお話をうかがってみた。

インターエデュ(以下、エデュ):子どもたちの英語力と積極的な姿勢に驚きました。

黒瀬先生(以下、黒瀬):子どもたちには英語を知識として覚えさせるよりも、自然と使えるものとして触れさせています。大切なことは授業の中で英語を使う必然的な状況を作ってあげること。私自身もそうでしたが、必要があればどんな子でも自然と英語は使えるようになっていくものです。

エデュ:先生たちのチームワークもよくて子どもたちも楽しそうでしたね。

黒瀬:子どもたちには英語を「勉強する」というより「練習する」と言っています。ネイティブと私たち日本人の教員は何度も何度も話し合って授業の展開を決めます。試行錯誤に時間と労力をかけてから授業を行うので、子どもたちが楽しそうに英語を使っていると、こちらまでうれしくなります。子どもたちが将来、抵抗なく、自然と英語が使えるように、最初から英語のシャワーを与えています。


低学年ほど恥ずかしさがなく、発音がきれい

英語を担当している有田美希先生にも話を聞く。

エデュ:先生は低学年をご担当されているということですが、低学年からの英語というのはどうなのでしょうか?

有田先生(以下、有田):実は学年が上になり、カタカナを覚えてしまうとカタカナ英語を身につけてしまいがちなのです。カタカナを知らないうちにダイレクトに英語の音で覚えてしまう方が自然な言葉として根付きます。それに中学生になると恥ずかしさや照れが出てきますから、学年が小さい時期ほど英語は自然に身につきやすいですね。

エデュ:公立でも英語教育が始まっていますが、文理小学校との違いはどこだと思いますか?

有田:やはり量の違いですね。朝の放送も英語ですし、掲示も英語。ネイティブの人数も断然に多いです。子どもたちにとってもネイティブの先生は外国人という感じではなく、どんどん話をしているので英語に対して抵抗がない子が多いです。

学校の中には英語の他に古文の掲示もある。
英語以外にも、とにかく言葉の掲示が多い。階段には算数のかけ算が掲示されている。

これは、文理小学校の教育の3本の柱である、

心を育てる 知性を育てる 国際性を育てる

この中の「知性を育てる」に通じる。
「国際性を育てる」ための英語のシャワーだけではなく、「知性を育てる」ため、学校のあらゆるところに考えるきっかけづくりがされているということだ。

職員室に入ってくる子どもたちも、とても礼儀正しい。古橋先生は言う。
「五感を通して環境の中で言葉や数字、正しい礼儀作法にふれさせる。教え込むというより自然にふれるということを何より大切にしている」と。

訪問edu's eye

英語の授業の中でも、日本語と英語は常に日本語教員とネイティブ教員の口から発せられる。
取材を通じ、文理小学校が英語のシャワーの中で育てようとしていることが見えてきた。それはコミュニケーションをとろうとすることを楽しいと感じ、英語と日本語の大きな隔たりを感じることなく意見や感情を表現する「心」と「知性」を育てることだと。
言葉の違いにものおじすることなく、積極的に世界とかかわっていこうとすること。
英語にふれ、言葉の違い、文化の違いを楽しいと感じること。
それこそ、小学校で英語を学ぶ上で大切にすべきことかもしれない。文理小学校の先生たちが作り出す英語教育にふれれば、小学校英語で教えるべきことが見えてくる。

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取材協力: 西武文理小学校
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