インターエデュ(以下エデュ):インターエデュのユーザーには、お子さまを東大や医学部に入学させたいという方が多くいらっしゃいます。これら超難関大学に入学するには、いつごろから勉強が必要なのでしょうか?
レクサス渡辺先生(以下渡辺):いわゆる「受験勉強」をいつ始めるか、ということですね。下地さえできていれば高校3年生の1年間でも足りますが、その「下地」が問題です。入試に必要な科目の基礎はもちろんですが、その他に「国語力」が十分備わっていないといけません。これは一朝一夕には身につきません。なるべく早い時期から取り組む必要があります。
エデュ:国語力とは何なのでしょうか?
渡辺:ここでいう「国語力」は、学校の国語や受験国語の成績とは違います。学校の国語は、誤解を恐れずに言えば、文学的鑑賞と倫理的思考訓練の場となっていて、語学としての日本語を教える科目にはなっていません。受験国語には、日本語の使い方を問う問題はほとんどありません。
「国語力」という言葉を、ここでは「日本語のしくみを理解して、正しく論理的に読み、書き、考える力」ととらえます。
たとえば簡単な例ですが、この英文を和訳してみてください。
Many people are buying cars.
エデュ:「多くの人々は車を買っている」、だと思いますが。
渡辺:多くの人々はそう訳します(笑) でも、まず第一に、「は」という助詞の使い方に問題があります。主語なら何でも「〜は」としてしまう人が多いのですが、それではいけません。「は」は、他と区別する場合と、既出の話題に触れる場合に使われます。「多くの人」が既出の話題でないなら、「が」を使うべきですね。でも、たとえば「彼は買わない」という文に続くのであれば、「彼」と区別する必要がありますから、「は」でかまいません。
それから、日本語の名詞に複数形はありませんから、peopleは「人々」より「人」の方が自然です。ここまでをまとめると、「多くの人が車を買っている」という訳が最善、ということになります。
エデュ:確かにそのほうがしっくりきます。他にも、英文を和訳する際に気をつける点はありますか。
渡辺:日本語には「文末決定性」という特質があります。ですから文脈によって、「買っている」という情報よりも「多い」という情報を重視する場合は、「多い」を文末に持っていって、「車を買う人が多い」とした方が、より正確な訳になります。
なお、現在進行形は何でもかんでも「〜ている」という訳になるわけではなく、「〜つつある」「〜しようとしている」の方が合う場合も多いし、「〜する」でいい場合もけっこうあります。逆に、現在形を「〜ている」と訳すべき場合もたくさんあります。
要するに、英語を日本語に正しく置き換えるためには、英語に関する知識はもちろんですが、日本語に関する知識も不可欠なのです。
エデュ:他の教科に「国語力」はどのように役立つのですか。
渡辺:英語は今の例で明らかになりました。続いて、他の科目にどう影響するかを考えてみましょう。
数学にしても理科にしても(さらには社会にしても)、科学あるいは学問である以上、「定義」と「存在理由」を正確にとらえることが必要になります。そしてそれらは全て、言語によって記述されます。ですから言葉を正確かつ論理的に用いる力は、どんな科目においても必須なのです。それは、受験勉強においても変わりません。
さらに、医学部入試について言えば、ほとんどの大学の入試に「小論文」と「面接」あるいは「グループ討論」があります。ここでは、まさに国語力がストレートに試されます。
そして、大人になって生きていくときに国語力が必要であることは、社会経験のある皆さんなら、容易に想像がつくことと思います。
エデュ:たしかに、社会人になっても相手に伝える力、即ち言語力はもっとも必要な能力だと思います。インテ・レクサスではどのようにして「国語力」をつけていくのでしょうか。
渡辺:インテ・レクサスの「言語」という科目では、まず日本語を歴史的にとらえます。本来の日本語としての和語とその文法、外国語としての中国語(漢字と漢語)の伝来およびその吸収、音韻と文法の変遷、昨今の「日本語の乱れ」の問題……こういったものを解説した文章を読みとることにより、日本語を「流れ」としてとらえます。同時に、「書く」練習を随時行い、文章を書くことが苦にならないようにします。
また、英語をある程度勉強した段階では、日本語と英語を比較することによって、両者の構造の違いや、「訳」というのがどういう作業であるかを理解してもらいます。
英語の長文読解で「和訳を読んでも意味がよくわからない」なんて声をよく聞きますが、それは文章内容についての知識が不足しているからなんです。そこで「科学史」を読むことによって、現代における諸問題とそれに対する考え方を、歴史的背景とともに学びます。
こういう内容を学ぶには、高校受験のない一貫校での中学時代が最適です。一生のことを考えれば、この絶好の機会を逃すのは、非常にもったいないことだと思います。
取材協力:レクサス教育センター
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