昨年末、国際学習到達度調査で日本の「科学的応用力」が前回調査時の2位から6位に転落した結果が発表され、教育界に衝撃を与えました。ゆとり教育による学力低下の問題も取り上げられていますが、皆様のお子さまの理科力はいかがでしょうか?
自宅の周りで自然や生物に触れることができる機会は10年前と比べ、圧倒的に少なくなってきています。お子さまによっては、体験の場が少なかったことで、自然や科学に対する応用力が培われなかったというケースもあるかもしれません。とは言え、幼児から小学生の時期に身につけておきたい、世界の仕組みを科学的に見つめる力。中学受験では、小野学園女子中学校で問題解決能力を見る「理科実験入試」という特待生入試が行われています。
そこで、インターエデュでは、幼児期から理科実験を体験することができるサイエンス倶楽部を取材しました。そこには、「なぜ?」という先生の問いに、口々に仮説を立て実験に熱中する小さな科学者たちの姿がありました。
総武線「本八幡」駅からすぐのところにあるサイエンス倶楽部・本八幡教室。授業が始まる30分前より、次々と子どもたちが集まってくる。先生2人につき、今日の参加は7人。実験テーマは「石の下には何がいる?〜縁の下の力持ち〜」。
教室に来た子どもたちは、実習着を着て、自分用のファイルを出して時間どおりに席に着く。そして配られた資料を丁寧にファイルに綴じる。
「これ、何だ?」教室長の萬代純一先生が問いかける。「はっぱ、葉っぱ」と答える子どもたち。「何色ですか?」「みどり!」「秋になるとどうなる?」「茶色くなる!」「おちる!」先生からの質問と子どもたちの答えがテンポよく繰り返される。
配られた落ち葉をじっと観察すると、また口々に「パリパリ〜」「色が変わってる」「アリに食べられたみたい」「ダンゴ虫が食べたんだよ〜」と話し始める子どもたち。その答えを、萬代先生は、一つ一つ汲み取り、言葉のキャッチボールでつないでいく。
「では、その落ち葉の周りには何がいるか調べてみましょう」と萬代先生が言うと容器に入った土が登場。これは、落ち葉のある場所から萬代先生が掘り取ってきたもの。その中にいる虫を子どもたちはスプーンですくい、プラスティックの容器に入れていく。
そして、捕った虫をさらに虫眼鏡や実体顕微鏡で観察し、スケッチする。「よ〜く見て描いてくださいね、何がいましたか?」「ハサミ虫、ダンゴ虫、アリ!、わらじ虫、ミミズ!」子どもたちの口から次々と飛び出す虫の名前。「ここに目がある!」足や触覚の節まで細かく描かれたスケッチを見ると、子どもたちの観察力のすごさが分かる。
2時間の授業の後半は、吸虫管(きゅうちゅうかん)の工作。これを使えば、吸ったものが管の中には残るが、口の中には入らない仕組みになっている。
完成した管で子どもたちは、ダンゴ虫を吸い上げ、「すっご〜い!」と歓声をあげていた。
そして最後に、これまで見てきた小さな生物の世界から、大きな自然の仕組みを考える。「この落ち葉が落ちてきた木は、太陽から光を浴びて成長し、落ち葉を落としてみんなが見
た虫たちに食べられます。そして栄養となってまた木に還っていきます。このように自然の中で、栄養がグルグル回っているんですね。これが森の秘密です」と萬代先生は、食物連鎖の話をわかりやすい言葉で説明した。
授業が終わると、子どもたちはきちんと椅子を机に入れ、嬉しそうに自分で作った吸虫管を手にし、お母さんのところへ駆けていく。
教室の外でガラス越しに、子どもたちの様子を見守る保護者。教室に通うようになったきっかけと感想を、聞いてみた。
子どもたちにも、感想を聞いてみると、みんな「楽しい!!」と笑顔になる。帰り際も、帰ってしまうのを惜しむように、「先生、さようなら」とお辞儀をし、帰っていっていた。
子どもたちが実験や観察という体験を通し学んでいくことは何なのだろうか、萬代先生にお話をうかがった。
実験を通して子どもたちが変わっていく瞬間を感じる時はどんな時ですか?
たとえば、最初は活発でやんちゃだった子が、行儀よく順番を待つようになったり。控えめで大人しかった子が、積極的に自分でやってみようと張り切りだしたり。特に幼児コースに通っている子どもたちが成長するスピードは、毎月、目を見張るものがあります。教室では「椅子から立ったときに、椅子を机の中に入れる」「話を聞く時、姿勢を正す」といった基本動作を繰り返し指導していますが、年度末に修了証を渡すとき、きちんとした姿勢で受け取ろうとする子どもたちの姿を見て、「ああ成長したな」と笑みがこぼれます。
子どもたちの好奇心について教えてください。
まだ幼い4、5歳の子どもたちは、興味が次から次へと移りがちです。それを満足させるまで、言葉のキャッチボールを繰り返し、子どもたちの反応や様子をよく確かめながら、徐々にこちらのペースで実験に集中させていきます。実験にしても、工作にしても、絶対的方法というものはありません。時には、子どもたち自身が創意工夫をして、「先生、こうしてもできるね」と新たな方法を編み出していくこともあります。子どもたちの物の見方や考え方に、こちら側が驚かされることもよくあります。
科学を学ぶことで身につく力とはなんだと思われますか?
物事の仕組みを「考える癖」だと思います。教室に来て、未知の物体や現象に触れて、「何だろう?」「どうしてだろう?」と問いかけることによって、子どもたちは身近なものや事柄に対して、科学的な目を向ける習慣を身につけていきます。授業が始まるまでの間、子どもたちから「家でこんなことがあったよ」という話を聞くたび、彼らの世界に対する好奇心が日に日に高まっていることを実感します。
サイエンス倶楽部ではこの秋、幼児(年中・年長児)を対象とした新規会員募集を開始する。また人気の小学生コースも、教室・学年によっては途中入会を受け付けているとのこと。体験は無料で受けられるので、この機会に参加してみてはいかがだろうか。
夏には、熱気球に乗って空へ浮かぶなど大自然ならではの野外実習も行われる。 |
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