インターエデュ掲示板でも話題に上る理科実験教室。「具体的にどういうことをやっている教室なのか?」という疑問・質問が寄せられている。 そこでインターエデュは15年の歴史を持つ理科実験教室のパイオニア「サイエンス倶楽部」の授業風景をレポートしてみた。
前回の特集で取り上げた国立教室の幼児コースに続いて、 今回は自由が丘教室の小5生対象のコースにお邪魔した。 自由が丘といえば、日能研・SAPIX・栄光ゼミナール・東京個別指導学院など多くの大手中学受験塾・個別指導塾が軒を連ねる、中学受験の激戦地域。 その中で、塾とは違うアプローチで子どもたちの教育に寄与する同教室の実習スタイルに迫った。
「自由が丘教室では1号館・2号館あわせて約900名の会員が学んでいます。月に一度の実験を、子どもたちは本当に楽しみにしていますよ」
そう語るのは、サイエンス倶楽部自由が丘教室長の小野澤先生。小5の冬といえば、中学入試まであと1年あまり。受験勉強が本格化してくる時期だが、受験勉強のために通っている子どもはどれくらいいるのだろうか。
「たしかに中学受験のために塾通いをしている会員は多いです。けれども多くの保護者の方々は、受験とは関係なくサイエンス倶楽部に子どもたちを預けていただいています」
中学受験生が多い中、はたしてどのような理科実験が行われているのだろうか。インターエデュは小5クラスでの実習に密着取材した。
クラスの人数は10名〜15名程度の少人数制で、2名の教師が指導する。理科の実験である以上、火を使うことなどもあるため、一人ひとりに目が行き届く体制は非常に安心だ。
今回取材した12月の小5クラスでは「動物のからだI」というテーマで、人間と動物の消化器系について実習を行う。まずは基本的な知識の確認として、人間の消化器官についての講義が20分ほど続く。
一般的な中学受験のテキストでは「口⇒食道⇒胃⇒小腸⇒大腸⇒肛門」といった具合に分類するが、サイエンス倶楽部では口だけでも「唇・歯・舌・唾液腺(耳下腺・舌下腺・顎下腺)」と、非常に細かく分類している。中学受験のテキストに慣れている生徒たちにとっても、新しい知識となったのではないだろうか。
前半のメインとなる実験は、鶏の解剖。絞めて羽をむしった状態の鶏をまるまる1匹使って解剖するというもの。
「これが解剖用のハサミね。先端が尖っているものと丸まっているものがあって、丸まっているほうを下にしてハサミを入れていきます」
理科のテキストで解剖用ハサミのイラストを見たことのある子どもたちも、実物を見るのはこれが初めて。みな興味深そうにうなずいている。
解剖はまずくちばしから大豆を入れるところから始まる。そこから小野澤先生の手によって鶏にハサミが入れられる。ふだんめったに目にする機会のない鶏の体内を、子どもたちはまじまじと見つめている。
首を切り開き、胸を開けて、食道から胃へと大豆が通過していく様子を確認。一つひとつの部位を切り開く際にも、小野澤先生から細かな解説が加わる。「これが鶏の肋骨。けっこう硬くてずっしりしてるでしょ」という具合に、ゴム手袋をはめた子どもたちへ次々と手渡していく。
さらに胃、砂肝、腸と、順に解剖していく鶏の消化器の解剖は、みっちり1時間強ほど続く。学校でも、ここまで間近に鶏の解剖を見られるところは恐らく少ないだろう。この工程は大人でも非常に興味を惹かれるもので、この貴重な実験を筆者も食い入るように見つめてしまった。
栄養素 | 消化液 | 栄養素 | 消化液 | 栄養素 |
---|---|---|---|---|
でんぷん⇒ | (唾液) | 麦芽糖 ⇒ | (すい液と腸液) | ブドウ糖 |
たんぱく質⇒ | (胃液) | ペプトン ⇒ | (すい液と腸液) | アミノ酸 |
脂肪⇒ | (すい液) | 脂肪酸とグリセリン |
軽く休憩を挟んで、後半はでんぷん・たんぱく質・脂質の3大栄養素の消化に関する実験へと移る。まず黒板上で知識を確認し、それを実際にやってみる検証実験だ。
小5の冬ともなれば、中学受験生は3大栄養素の消化というだけで、右のような表がパッと思い浮かぶのではないだろうか?事実、黒板上で知識を確認していく際は、子どもたちのほうから積極的に発言していた。
通常の塾ならば、この知識の確認だけで終わってしまうだろう。だが理科実験教室ではここからが本番。まずはたんぱく質と脂質の消化に関する実演からはじまる。かつお節やオリーブオイルを試験管に入れ、消化液に近い成分の液体を混ぜてぬるま湯に漬ける。ものの数分でかつお節が跡形もなくなり、オリーブオイルが分解される様子を目の当たりにして、生徒たちは口々に感嘆の声を上げた。
そして最後はでんぷんの消化の実験。これは生徒が実際に試験管を手に取り、アルコールランプにかけて反応を調べる。
・でんぷんにヨウ素液を垂らすと、青紫色に変わる(ヨウ素でんぷん反応)
・唾液と混ぜたでんぷん(活性温度)にしたものにヨウ素液を垂らしても反応がない(麦芽糖に変わっている)
・唾液と混ぜたでんぷん(活性温度)にしたものにフェーリング液を垂らして沸騰させると赤褐色の沈殿物ができる
以上のことも中学受験生ならば知識として知っていること。とはいえ、ヨウ素液やフェーリング液で実際に色が変わる様子を見ると、思わず「おおっ」と歓声を上げる子どもが多かった。科学的な変化を自分の目と手で確認できたとき、子どもたちの目はこれ以上なく輝く。こうした知的体験が基となり、将来は理系に進むという子どもも少なくないと思われる。
保護者の方にもお話をお伺いできたのでここに紹介する。
・受験とは別物、という感覚で通わせています。家では絶対にできないことをやってくれて、教室のお友達と楽しく過ごせるという空間はとても貴重なものだと思っています。
・理科の実験をここまでやってもらえる環境は他にないです。一人ひとりに顕微鏡などの器具が行き渡っていますし、今回も鶏をまるまる1羽つかって解剖してくれました。月に1回、娘が有意義な時間を過ごせているなと実感できています。
・理科の実験が中学受験でも生きてくれればそれに越したことはないですが、それ以上に息子がいつも楽しく通っているということに満足しています。サイエンス倶楽部から帰ってくると、いつも楽しそうにその日の実験について話してくれますから。
今回取材した自由が丘教室は新年にフロアを増設。また、来年春にはたまプラーザと練馬にも新校舎を立ち上げるという。
学校でも塾でも決して味わえない知的体験フィールド、サイエンス倶楽部。そこで得られるさまざまな知的遭遇によって、お子さまの向学心が高まることは間違いない。中学受験をお考えの方もそうでない方も、ぜひ一度体験実習に足をお運びいただき、実験に目を輝かせる生徒さんの表情をご覧いただきたい。