インターエデュ掲示板でも話題に上る理科実験教室。「具体的にどういうことをやっている教室なのか」という疑問・質問が寄せられている。そこでインターエデュは15年の歴史を持つ理科実験教室のパイオニア「サイエンス倶楽部」を取材した。塾とは違うアプローチで子どもの教育に寄与する同教室の教育スタイルに迫る。
「身近にあるものをテーマに実験することで、生徒の『知的好奇心』を刺激する。これがサイエンス倶楽部の理念です」
そう語るのは、サイエンス倶楽部国立教室の室長、佐久間和子先生。
「教師が漫然と講義するだけの授業は行いません。実際に生徒が自分の頭で考えて、自分の手を動かします。そういった実習をメインにしているので、小さなお子さんでも2時間みっちり集中して授業に臨んでくれます」
机上の授業だけで終わらせず、常に子どもたちの興味を惹くような仕掛けを施してあるようだ。
「その際にいちばん重視しているのは、『本物を使う』ということです。たとえば砂糖を作る授業ではサトウキビを沖縄から取り寄せますし、繊維がテーマとなる授業ではカイコがさなぎの状態で繭を作るまで育てたものを用意します」
学校や塾との授業とは一線を画し、素材にこだわり、実習を重視するサイエンス倶楽部。その授業の中で生徒は何を学び、何を感じ、どのようなものを身につけていくのだろうか。
「生徒たちの様子については、実際に授業をご覧いただくのが一番だと思います。ご入会いただくご家庭には、必ず体験実習にご参加いただいていますから」
そういって我々を教室へと案内する佐久間室長は、自身が提供する教育サービスのクオリティへの自信にあふれていた。
佐久間室長の案内で取材した幼児クラスは、1クラス12人編成の少人数制。2人の教師により、授業、実験が行われる。今回は「飛ぶおもちゃ作りに挑戦!」というテーマで、原理の解説から工作・実験までを行った。
前半は「ものはどうやって飛ぶのか」ということについての講義がメイン。とはいえ、生徒一人ひとりに対してつぶさに声をかけることを忘れない。12人の生徒のうち、発言しない子・授業に興味を失っている子は一人もいなかった。
前半の山場は、飛行機が飛ぶ原理を解明すること。航空力学はしっかり学ぼうと思えば工学系の大学院へ進まねばならないが、「紙で作った模型」「重量秤」「ドライヤー」というありふれたものを3つ使うだけで、『翼が風を受けると揚力が発生し、重量が軽くなる』ということを見事に実証してみせていた。
その過程で最も印象に残ったのは、「最初から答えを教えない」という姿勢が貫かれている点だ。
「せんせー。これ、どうなるの?」
「うん。どうなると思う?」
「んー……こうかな?」
「うんうん。どうしてそうなると思った?」
こういった会話が一人ひとりの生徒さんとなされていた。各々が自分なりの考えとその根拠を述べるという、主体性と思考力が鍛えられるその過程は、大学におけるゼミ形式の授業に通ずるものがある。解説する前に行われる「どうして?」という問いかけ。それが生徒に「自分で考える」というステップを踏ませることとなり、自ら思考する習慣づけを行っている。
それを実践するテーマとして航空力学を選択し、幼稚園児でも理解できるよう噛み砕いて提示し、しかもただ教えるだけでなく子どもたち自身に考えさせる……この授業スタイルは、15年間の実績で培われたノウハウがあればこそできる芸当だろう。
後半は実際に手を動かしておもちゃを作る実習がメイン。竹とんぼの要領で飛ばす『紙とんぼ』や、発泡スチロールで作ったロケットを空気圧で飛ばすオモチャを作成し、実際に飛ばすまでを実習した。
生徒たちは「作る⇒飛ばす⇒作り直す⇒飛ばす」という過程を踏むことで、より遠くに、より美しく飛ばすための試行錯誤を繰り返す。その間、教師が手出しをするようなことはしない。あくまで生徒の自主的な創意工夫に任せていた。
しかしそれは決して放任ではない。この間、2人の教師は常に生徒の安全に気を配り、飛ばしたオモチャが別の子にぶつからないようスペースを確保したり、使った鋏をそれとなく回収したりと、影になり日向になり生徒たちをフォローしていた。
主役である生徒たちは、この実習を心から楽しんでいる様子。紙トンボの折り方やロケットの翼のつけ方に工夫を凝らす表情は真剣そのもの。中には友達と協力してよりよい飛ばし方を相談する生徒もいた。その結果として、より遠くに飛ばせたときの喜びは格別なものだろう。こういった原体験こそが、後の名エンジニア・大科学者を生む素地となることは間違いないだろう。
2時間の授業はあっという間に終了。保護者に連れられて生徒たちは解散した。生徒を迎えに来た保護者にもインタビューを行ったので列記する。参考にしていただければ幸いである。
中学受験の現場では入試で点数を取ることのみに目が行ってしまい、ともすると中学入試がゴールとなって入学後に学習の意欲が続かなくなるケースもまれではない。そういった事態に陥らないためにも、小さい頃から知的好奇心・探究心を育むことはたいへん有意義であるといえるだろう。