22年間中学受験生を教えてきた中で、そのようなケースはごく普通にありました。ある家庭のお嬢さんは、自宅から1時間半掛かる私立中学に合格しました。しかし、小学校を出たばかりの女の子にとって1日3時間の往復は大きな負担になります。そこで、そのご家庭では、学校へ通うために通学時間が45分程度の家へ住み替えをされ、お嬢さんの負担は大きく減ったそうです。また、駅から近い家を選んだので、家と駅との往復の時間も安心です。
なによりも「通学時間の短縮」です。先ほどのお嬢さんの例もそうですが、成長期にある子どもにとって、欠いてはならないものは睡眠です。例えば、朝6時に家を出る子どもと、7時に出る子どもでは同じ時間に就寝したとしても1時間の差が生じます。
小学生はリビングやダイニングで勉強するので構いません。わからないことを気軽に聞けるため、コミュニケーションのきっかけが増し、家族の絆が深まります。子どもの情操教育には、家族のふれあいが大切です。空間、時間の共有が心の安定をもたらし、勉強の能率も上げるのです。
中学受験のメリットの一つは、学校を選べるということです。近頃は公立中学校でも学区を撤廃したり、保護者の学区外の通学要望柔軟に対応したりしていますが、行政区分をまったく無視して(大げさに言えば日本中どこでも)中学を選んでよいのは私立学校だけです。ところが、現実には親子で気に入った第一志望校が通学距離圏にあるとは限りません。
つまり、学校選びと家選びの共通点は「6年間の教育環境を買うこと」と換言できます。家選びでも子どものための環境を整える点で、共通していると言えるのではないでしょうか。1日の大半を過ごす学校環境だけでなく、家庭生活の環境も成長期の子どもにとっては最も重要な要素です。仮にお子様が志望する学校が通学圏内に無かったとしても、子どもの伸びようとする力が発揮されるのであれば、学校選びとあわせて住み替えもぜひ検討してあげてほしいと思います。