掲載期間:平成18年2月1日〜平成18年3月31日
古澤佑一先生
東京農工大学 物理講師
都立国立高校 物理講師
都立八王子東高校で教えていた際、小学生のための「親子理科実験」を開催。
都立国立高校では、中学生のための「楽しい理科教室」を開催。
(聞き手:インターエデュ)
小学校での理科教育が問題だと言われていますね。どうして低学年では、「理科」がなくなってしまったのでしょう?
古澤先生:そうですね。今、低学年では理科と社会がなく、「生活科」になっています。 それは、かつての画一化された「詰め込み教育」を反省し、教える内容を自由に選択させることで、「個性」を伸ばそうとしたのです。 しかし、結果的にマイナスになってしまった。 学校や先生によって、教えている内容に格差が生まれています。 「生活科」で調理実習などをして子ども達も楽しく取り組んでいるそうですが、先生の得意分野に偏り、理科的要素が欠落しがちだと聞いています。 小学校でも理科専科の先生がいますが、理科実験の補助や、実験器具の管理が中心です。 本当は音楽と同じように、理科でも専任の先生が教えたほうが、子ども達の科学への関心を高められると思います。
科学博物館などの実験イベントも大人気です。 テレビの科学番組や、子供向けの科学雑誌、図鑑やインターネットなどで「科学知識」は豊富な子どもも多いですよね。
古澤先生:そうですね、それで「知っているつもり」になりがちです。 実は、そこが大変問題で、間違った科学を信じ込んでしまう場合もあるのです。 小学生時代は、本来は体を動かし、手先を動かす遊びが大切です。遊びながら何かを発見したり、工夫したりして、自然に自ら学べるのです。 磁石や虫眼鏡、顕微鏡、水車、モータのおもちゃなどで遊んだり、工作したりすることは、大きくなって理科の問題を解くときにも、理解に大変役立ちます。
そうですね。今は、パソコンやテレビゲームに夢中な子が多いかもしれません。
古澤先生:現在、大学や高校で教えていますが、数学的センスや計算力はあるのに、現象認識の問題ができない学生がいる。 昔は、多くの者が幼い頃普通に経験してきたことが、今は、「経験不足」「体験不足」の場合が多い。だから、想像がつかない。 理科では、「やってみないとわからない」、「予想と違う結果が出る」、「一度では成功しない」といったことは、日常茶飯事です。 例えば、先日、重心の学習のために、小林亜土先生とともに「ダルマ」や「回転円板」を作った(右写真)のですが、重心の位置を定めるのに工夫を要しました。 この後、板と板の間をもっと広げる必要があった。失敗して、はじめて学べることも多いです。答えもひとつではありません。 試行錯誤して、工夫して、再度チャレンジする、こういう体験が重要です。
そうですね。そういう体験が、身近で出来る場が欲しいですね。
古澤先生:理科好きな子どもには、特に、机の上の勉強だけでなく、のびのびと科学遊びをさせて、いろいろな自然体験をさせてあげてください。 決して無理に「教えよう」としないこと。 間違ったことを教えてしまうと、それをずっと信じ込んでしまいますから。(笑) 随分前になりますが、私が小・中学生のとき、東京の杉並区では毎週土曜日に区内から理科好きの子どもを集めた「科学教室」がありました。 「ラムネ作り」や「葉っぱを煮出して葉脈を観察する」「カエルの解剖」などをやって、とても楽しかった。
いいですね。先生は、そこで科学に魅せられたのですね。
古澤先生:そうですね。小学生のころは「植物」や「生物」が大好きでした。 国立科学博物館や目黒自然教育園にもよく行きましたよ。 幼い頃の楽しい体験はずっと心に残るものです。体験の中から、子どもが自ら「発見する喜び」や「ふしぎだな、と感じる心」を大切にして。 知的好奇心を刺激する、「きっかけ」を与えて、子どもの成長を「見守る」ことが必要です。自分で発見したとき、子ども達の目は本当に輝きだします。
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掲載期間:2006年2月1日〜